拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

手帳

あなたへ


こちらでは、今日から、12月になりました。
手帳のスピンを今月に挟みながら、
この11ヶ月の出来事を見返してみました。


私の予定、あの子の予定が書き込まれたこの手帳には、
あなたの予定だけ、書くことがなくなってしまったけれど、
あなたとの思い出が、たくさん、記してあります。


夢の中で、あなたの世界に連れて行ってくれたこと。
楽しそうでしょ?凄いでしょ?って、
あなたが、そちら側で、
楽しく過ごしている様子を見せてくれましたね。


内容は、覚えていないけれど、
あなたが側にいて、安心した気持ちで、スッキリと目覚めた朝のこと。


あなたと一緒に、綺麗な虹を見たこと。
雨上がりの空に架かった虹は、とても綺麗でしたね。


あなたの車で、出掛ける夢も見ました。
なんだか、とても高級そうな車で、
朝一番に、
あれは、そちら側での、あなたの車なの?って、
思わず話し掛けた私の声は、
あなたのところまで、届いたでしょうか。


あなたと、デートした夢を見た日のこと。
あなたと2人、ゆっくりとした時間を過ごせたあの夢は、本当に、幸せでした。


あなたの声が聞こえて、目が覚めた朝のこと。


あの子と私。
同じ夜に、それぞれ、あなたの夢を見て目覚めた日は、とても驚きました。
あの日の朝は、あなたの夢の話で、とても、盛り上がりましたよ。
あなたと、何を話したのか、どんなことをしたのか。
それぞれに話しながら、
短い朝の時間でしたが、楽しい時間を持つことが出来ました。


この家で、あなたと一緒に、家族3人で暮らしている夢。
あなたの肩を揉みながら、他愛のない話をしていた私たち。
あの頃と、何も変わらず、
とてもあなたらしい返答は、今でも、はっきりと、覚えています。


お盆の初日は、
あなたが帰って来ることが、楽しみ過ぎて、
いつもよりも、早くに目が覚めたこと。
微かに感じたあなたの気配は、とても、温かかった。


真っ白だったページは、11ヶ月を掛けて、少しずつ埋まり、
とても、いい手帳になりました。


ページをめくりながら、ひとつひとつ、
あなたと過ごした夢の記憶を思い出してみました。


あなたは、こんなに、側にいてくれたんですね。


ありがとう。


残り、1ヶ月分の白いページには、
あと何回、あなたとの思い出を綴ることが出来るでしょうか。

 

 

 

記念樹

あなたへ


毎年、あなたの実家から届くキウイフルーツが、今年も届きました。


あなたの実家の庭にあるキウイフルーツの木が、
あなたの記念樹だと知ったのは、
あなたのお父さんが、そちら側へ旅立ち、間も無くの頃でした。


あなたが生まれた時に、お父さんが植えてくれたと、
幸せそうに話してくれた、お母さんの声に、耳を傾けながら、
あなたが生まれた時、
どんなに嬉しかっただろうかと、
密かに、想像したのでした。


生まれたばかりのあなたを腕に抱いて、
まだ言葉も分からないあなたに、
植えたばかりの小さなキウイフルーツの木を見せながら、
話しかけた日があったのかも知れませんね。


ただあなたの幸せだけを願い、
小さなあなたに笑いかけるお父さんとお母さんは、
あなたの温もりに、どれだけ幸せを感じていたことでしょうか。


キウイフルーツの花言葉は、生命力、豊富。


あなたは、その言葉の通り、
最期の時まで、力強く、生きることができましたね。


そして、豊富な知識や感性。
たくさんの仲間にも恵まれたあなたの人生は、
とても豊かな人生でしたね。


家族や周りの人たちに、
その豊かさを分け与えてくれたあなたのおかげで、
私たちも、あなたと共に、
豊かな時を過ごすことができました。


毎年、少し小ぶりだった実ですが、
今年は、とても大きく、立派な実を付けてくれました。


あなたには、
中でも一番、立派で、大粒なものを供えました。


そちら側でも、豊かな富に恵まれますように。

 

 

 

 

 

 

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黒のダウンジャケット

あなたへ


近頃のこちらは、随分と寒くなって来ました。


先日、夕方から、外出予定だったあの子が、
出掛ける前に、着て行く服を迷いながら、
これ、どうかな?って、私に着て見せたのは、
あなたのお気に入りだった、黒のダウンジャケットでした。


これ、すごく温かくて、気に入っているんだ
高かったけれど、長持ちしているよ


黒のダウンジャケットに袖を通しながら、
あなたが、そう話してくれたのは、
私達が結婚し、間も無くの頃だったでしょうか。


あなたのお気に入りの、
黒のダウンジャケットを、あの子に貸してくれたのは、
あの子がまだ、幼稚園生の頃でしたね。


バスに乗って登園していたあの子。
冬になると、
バスを待つ時間が寒いからと、


パパのお洋服を貸してあげるよ


そう言って、
あなたの黒のダウンジャケットを、
あの子に貸してくれたんでしたっけ。


リュックを背負ったまま、膝まですっぽりと隠れるそれは、
とても温かいと、小さかったあの子にも評判でしたね。


あの頃のあの子は、
あなたの黒のダウンジャケットを着せると、
服が歩いているみたいで、とても可愛らしかった。


バスの到着を待ちながら、
あの子のそんな姿を収めた写真を、
あなたは、目尻を下げて、眺めていましたね。


あれから、10年振りに、袖を通した黒のダウンジャケットは、
あの子に、ぴったりのサイズになっていました。


大きくなったね


小さかったあの子の姿と重ね合わせながら、
そんな言葉が出た私に、あの子は言いました。


顔を隠したら、お父さんに見える? って。


あなたを見送った頃は、家族の中で、いちばん身長が小さかったあの子。


黒のダウンジャケットは、
もっと大きくなったら、僕が着たいと、
大切に保管していたものでした。


お父さんに、そっくりになったよ


あの子の言葉に、そう返すと、
嬉しそうに、出掛けて行きました。


あなたの身長を、少しだけ越したあの子。


時々、あなたの温もりを探しながら、成長し、
あなたの、黒のダウンジャケットが似合うようになりましたよ。

 

 

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