拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

コトバ -彼女-

「彼がいない寂しさは

少しずつ

薄れていくものなのかなって思っていたよ

それなのに

いつまで経っても 寂しさは消えないんだ」

 

『うん』

 

「笑っていてもね

フッて彼の顔が浮かんで寂しくなるの

この楽しい気持ちを 彼と共有することは

もう出来ないんだなって思うと

とても苦しくて辛い」

 

『うん』

 

「私ね

彼がしてくれていたことを

全部自分で出来るようになれば

寂しくなくなるのかなって

そんなふうに考えていた頃もあったの

 

それなのにさ

 

彼を見送ってから

たくさんのことが出来るようになったけれど

どんなにたくさんのことが出来るようになっても

この寂しさは消えないんだって気が付いたの」

 

『うん』

 

「いつになったら 寂しくなくなるのかな」

 

時々 相槌を打ちながら

黙って私の話を聞いてくれていた彼女は

静かに口を開いた

 

『そんな日は来ないんだよ きっと

彼を愛している限り

ずっと

ずっと

寂しくて苦しいの

 

彼に逢いたくて泣いてしまうことも

この先だって きっと何度もあるわ

あの日 あなたの心に空いた穴は

きっともう 塞がらない

 

だって

彼以外の人が その穴を塞ぐことなんて出来ないもの

 

これまでみたいに

不意に空虚な気持ちに襲われて

自分はひとりぼっちなんだなって感じるのよ

 

でもね 大丈夫

あなたは大丈夫よ

私が側にいるから』

 

そうして

彼女は私を抱きしめて言った

 

『そんなふうに愛せる人と出会ったんだね』

 

「・・・そっか

私は彼をとても愛しているんだね」

 

静かな涙を流しながら

彼を想った

 

私は彼を とても愛してる

 

彼女に言われて初めて

この先ずっと この寂しさが消えないことも

これから先も きっと何度も泣いてしまうことも

静かに受け入れることが出来た

 

「ところであなたは

いつからそこにいたの?」

 

私を抱きしめてくれていた彼女の瞳を覗き込んでみた

 

『私?

私はね

あの日 彼があなたの中に遺した もうひとりのあなたなの

 

あの日の私は

あなたも気付かないくらいに小さかったのよ

 

今の私がこんなに大きくなったのは

あなたがたくさん努力をしてきたから

 

ほら 今はこんなふうにお喋りだって出来る

 

あなたはたくさん頑張ったものね』

 

私の中にいる 私よりも強い彼女は

時々こうして顔を出しては

あの頃のままの

泣き虫な私を抱きしめてくれる

 

彼女が本当に私なのか

それとも本当は

私の顔をした彼なのか

 

本当の答えなど知らないままに

私は彼を想い続け

ここから先も生きて行くのだろう

 

彼女と共に

 

 

 

話がしたいけれど

あなたへ

 

何日間、あなたと話をしていないだろう。

じっと、カレンダーを見つめて、指を折ってみる。

5年間 + ・・・えっと・・・

やっぱり、やめた。

 

あなたを見送ってからの私は、いつの頃からか、

あなたと話をしていない間の日数を数えることを、途中でやめて、

空を見上げ、ただ、あなたのことを考えます。

 

あなたと話が出来なくなってから、10日、30日と、

考えなくとも、その日数を数えることが出来ていた頃の私の方が、

今よりも、もっと、意気込んでいたような気がします。

 

今よりも、もっとたくさん泣きながらも、

あなたの、その温もりを探しながらも、

あなたの分まで、あの子を守らなきゃ。

強くならなきゃ って。

 

あの日が、遠くなればなるほどに、

あなたと話がしたくなる。

 

あの頃よりは泣かなくなった、今の私の方が、

あなたを探し求めているように感じるのは、

あなたが此処にいないということを、

受け入れてしまったからなのでしょうか。

 

特別なことじゃなくていい。

今日の出来事とか、

天気のこととか、

あの頃みたいに、あなたの声に耳を傾ける。

そんな時間を過ごしたい。

 

私たちが出会ってから、こんなに話をしないのは、

初めてのことだね。

 

喧嘩をしても、すぐに仲直りしていた私たちは、

話をしなかったことなんて、なかったもの。

 

この先ずっと、あなたと話が出来ないままに、

私は、この人生を生きて行くんだね。

 

ねぇ、あなた。

あと何年経ったら、あなたに逢える?

 

逢いたいよ。

あなたに逢いたい。

それなのに、私ね、生きたいの。

 

あなたと話がしたい。

 

こんなに苦しいのに、

こんなに寂しいのに、

空を見上げれば、

あなたに届けたい言葉は、私、頑張るよって。

 

でも、今日は、少しだけ、泣いてもいいですか。

 

 

 

名言

あなたへ

 

私が、歩みたい道をみつけたのは、

あなたを見送り、どのくらいが経った頃だったでしょうか。

 

とても険しい道のりに、

この道を歩むことは、間違えではないのかと、

時々、後ろを振り返りながらも、

もう後戻りなど出来ないと、何度も自分を奮い立たせながら、

此処までの道のりを歩んで来ました。

 

今の私の夢を知るのは、ただひとり。

あの子だけです。

 

先日の私は、あの子にひとつ、相談ごとを。

 

一歩前へと進むために、みつけた新たな挑戦ですが、

そこに、本当に、意味があるのかどうかすら分からずに、

挑戦すべきか、しないべきか、迷いながら、あの子に相談したのでした。

 

俺は、絶対にやるべきだと思うよ

やれることは、全部やった方がいい

やらないで後悔するなら、やって後悔しろ

そうでしょ?

 

そう言って、

あの子は、力強く、私の背中を押してくれました。

 

あの子の言葉は、躊躇なく、私の心の奥へと入り込み、

それまでの不安など、初めから存在しなかったかのように、心が晴れていきました。

 

やらないで後悔するなら、やって後悔しろ

 

これは、いつかのあなたの言葉。

 

あなたは、覚えていますか。

あれは、あの子がまだ、ランドセルを背負っていた頃のこと。

 

ずっと、夢見ていたことへと挑戦しようとしながらも、

二の足を踏んで、なかなか、大きな一歩を踏み出せずにいたあの子に、

あなたは、真剣な眼差しで、言ったのでした。

 

やらないで後悔するなら、

やって後悔した方がいいんだよ と。

 

思えば、あれは、

大きな夢へと挑戦した、あの子の初めての一歩でしたね。

 

あの時、あの大きな夢へと挑戦しなければ、

あの子はきっと、今のあの子ではなかったでしょう。

 

あの子は、私の背中を押しながら、

あの時のあなたの言葉は、俺の中の名言だと話してくれました。

 

大切な宝物を見せてくれるかのように、

話を聞かせてくれたあの子の瞳は、

キラキラと輝き、

それは、とても綺麗な宝石のようにも見えました。

 

あの頃のあなたの言葉は、強烈に、あの子の胸の中へと焼き付き、

あの子の背中を、力強く押し続けながら、

一歩、前へと踏み出せずにいた私のことも救ってくれました。

 

よし。やってみよう。

 

あの子と話終わる頃には、すっかり、自信を取り戻し、

私は、また、立ち上がることが出来ました。

 

今、私がこうして、夢へと向かって歩もうとすることが出来るのは、

力強く背中を押してくれたあの子と、あなたのお陰です。

 

私が歩むこの道。

一歩進んだ先には、何が見えるのだろう。