拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

日常の中に見つけた素敵な景色

あなたへ

 

私の職場が、今の場所に移転してから、

7年が経ちますが、

今朝の私は、通勤ルートから見える、初めての景色を見つけました。

 

それは、とても大きな銀杏の木。

 

秋色に色付いたその姿には、

思わず、目を奪われるものがありました。

 

一度、見つけてみれば、

どうして、これまで、気が付かなかったのだろうって、

とても不思議ですが、

移転から7回目の秋に初めて、

私の通勤ルートから見える場所に、

とても大きな銀杏の木があることに気が付いたのでした。

 

これまでの私の視界には入らぬままに、

毎年の秋には、そこで、

そっと季節を知らせていたのでしょう。

 

堂々と佇むその姿に、思わず、目を奪われた朝は、

なんだか、とても、幸せな気持ちになりました。

 

あなたを見送り、ゆっくりと歩むようになった私は、

見ようとしなければ、見えないものが、たくさんあることに気が付き、

ひとつひとつ、素敵なものを集めながら、ここまでを歩んできました。

 

いつかの私は、

会社からの帰り道に、夕日が綺麗に見える場所があるんだよって、

そんな手紙を書きましたが、

またひとつ、私の日常の中に、

あなたにも見せたい、素敵な景色を見つけました。

 

素敵なものを見つける度に、ふと浮かぶ、あなたの笑顔。

 

きっと何処かで、笑っていてくれますようにと、

そっと願いながら、

今日、初めて見つけた景色を思い返し、胸へと刻みました。

 

素敵な宝物がまたひとつ、ここに、増えましたよ。

 

 

 

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後悔しない子育て

あなたへ

 

後悔しない子育てなんて、ないと思うよ

 

これは、いつかのあなたの言葉です。

 

しっかりと手を繋ぎ、

真っ直ぐに前を向いて歩んでいたあの頃の私たちは、

それまでの道のりを、

ゆっくりと振り返ることは、あまりなかったけれど、

時に、2人で真剣に、

子育てについてを振り返る時間がありましたね。

 

私たちの子育ては、これで、合っているのだろうか って。

 

自分たちの子育てが、正しかったのかどうかは、

ずっと後にならないと、分からないこともあると思う

 

あの時、こうして良かったなって、思うこともあれば、

こうすれば良かったって、後悔することも、

きっとあるんだよ

 

後悔しない子育てなんて、ないと思うよ

 

俺たちは、きっと、反省したり、後悔したりしながら、

親として成長するんだよ

 

これは、あの頃のあなたの言葉です。

 

あの子のネクタイを手に取りながら、

盛大に落ち込んだ私の中に聞こえたのは、

後悔しない子育てなんて、ないと思うよ って、あなたの声。

 

そうして、あの頃のあなたの言葉は、

次々に私の中に飛び出してきて、

落ち込んだ私を、そっと抱き締めてくれました。

 

後悔しない子育てなんて、ないと思うよ

 

あなたの言う通り、きっとそうなのだと思います。

 

きっと、これから先の私も、

時に、悩み、後悔を見つけることもあるのでしょう。

 

あの頃のあなたの言葉を、ひとつひとつ思い返しながら、

今のあの子を見つめてみます。

 

自分の判断は、間違えだったのかも知れないと、

気が付くことが出来た今の私だからこそ、

出来ることがあるのかも知れませんね。

 

あの頃、子育てについてを真剣に話し合った私たちは、

これから先も、ずっと一緒だと思っていましたね。

 

あの子と向き合いながら、

これからの私たちは、2人で、どんなことに悩むのかな って。

 

もう、一緒に悩むことが出来なくなってしまったあなたの、

あの頃の想いを大切に、

あなたの分まで、しっかりとあの子と向き合いながら、

出来るだけ、

たくさんのあの子の笑顔を集めていけたらいいな。

 

 

 

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ネクタイ

あなたへ

 

あの子が高校生の頃に着ていた制服の、

ネクタイを手に取って、思い出していたのは、

高校生になる、ほんの少し前のあの子のことでした。

 

制服が手元に届き、

これからの新しい生活の始まりの日を、とても楽しみにしながら、

嬉しそうに、制服の試着をしたあの子。

 

ネクタイを手に取ったところで、

漸く、私たちは、気が付いたのでした。

 

ネクタイの締め方が分からない と。

 

反抗期、真っ只中だった、あの頃のあの子。

 

立派に反抗期を迎えてくれたことに喜びながらも、

あの子との向き合い方に、悩むことも多かったあの頃。

 

時には、あの子とぶつかり合いながら、私が見つけたのは、

もう、煩く言わなくても大丈夫だよって、

そんな、あの子の心の声でした。

 

些細なことで不機嫌になるあの子の姿に、

 

そうか

この子は、ひとりで歩き出そうとしているんだな って。

 

そうして、あの頃の私は、

しっかりと繋いでいた手を、緩めるように、

あの子から、少し離れて、

見守るという選択をしたのでした。

 

ネクタイの締め方を知らない私は、

あの子に、何も教えることが出来ないままに、

インターネットの動画を観ながら、

ネクタイの締め方を練習するあの子を、離れたところから、

黙って見守りました。

 

そうして、聞こえてきたのは、

出来たよって、嬉しそうなあの子の声。

 

初めて、自分で締めたネクタイを、

嬉しそうに見せてくれたあの子の姿に、

ほんの少しだけ、胸の奥が痛みながらも、

あの子が成長する様子を、愛おしく眺めたのでした。

 

大きくなったでしょ?

 

あの子の成長を、ひとつ見つける度に、

あなたには、そんなふうに語り掛けて来ましたが、

真新しい制服に、嬉しそうな顔をしたあの子も、

これから始まる新しい生活に、胸をときめかせたあの子も、

今になって振り返ると、何故だか、

随分と幼く、頼りなく思えました。

 

反抗期と呼ばれる難しい時期。

 

これまでの私は、あの頃のことを振り返りながら、

なんとか乗り越えることが出来たと思っていたけれど、

今になって、胸の奥がチクリと痛んで、

なんだか、涙が溢れてしまいそうなのです。

 

いつか、もしも、あの子が、

男の子のお父さんになったのなら、

成長した我が子に、ネクタイの締め方を教えながら、

あの子は、きっと、思い出すのでしょう。

 

あなたでも、

私でもなく、

インターネットの動画で、ネクタイの結び方を学んだ、

あの頃の自分の姿を。

 

気付かぬうちに、私は、あの子の心に、

後になって見える大きな傷を付けてしまったのかも知れません。

 

煩わしいと思われても、あの子と一緒に、

ネクタイを結ぶ練習をした方が良かったのかな。

 

反抗期だったあの子と、どう接したら良いのかが、分からなくて、

たくさん悩んだあの頃の私の精一杯の答えは、

間違えではなかったのかな。

 

あなたの分と私の分。

2人分の愛情を、あの子に注ぎたい。

 

そう思いながら、

あの子と向き合って来たはずの私ですが、

今になって、胸の奥が、痛くて仕方がありません。

 

あの頃の私の判断は、本当に、正しかったのかな って。