拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子が100歳になる日まで

あなたへ

 

じいちゃんと、

お父さんと、

お母さんのばあちゃんと、

じいちゃん。

 

4本の指を折り、やがて、

ため息を吐き出したのは、先日のあの子でした。

 

4人。

これは、あの子が向き合った、

そちら側へ見送らなければならなかった人の数です。

 

ねぇ、俺、多過ぎない?

 

あの子のこんな声に、言葉が詰まりました。

 

思えば、私があの子くらいの年齢の頃には、

まだ、多くの別れを知らずにいました。

深い悲しみと向き合うことを知らないままに、

また明日ね の約束は、

永遠に、訪れるものなのではないかとさえ考えていました。

 

あの子は、まだ18歳であるにも関わらず、

焼香の仕方も、収骨の仕方も、

見送るまでの段取りを、よく知っています。

 

多い・・・よね

 

あの子の言葉に、

漸く、口を開くと、あの子は、言いました。

 

お母さんは、長生きしてね

俺が、100歳になるまで生きていてねって。

 

先月、私の父が息を引き取り、

あの子にとっても、

とても大切だった存在が、またひとり、この世を去りました。

 

永遠など、この世に存在しないことを、

早くから学ばなければならなかったあの子は、

きっと、想像してしまったのでしょう。

いつの日か、私が此処からいなくなる日のことを。

 

えぇ?お母さん、その頃いくつ?ギネスじゃん!

 

なんて、戯けて返した私の言葉に、

一瞬、寂しそうにしたあの子の顔が、忘れられません。

 

人は、いつか死んでしまう

それを重く受け止めるには、あの子は、まだ若すぎる。

寂しそうに、私を真っ直ぐに見つめたあの日のあの子の瞳は、

あなたが知らない色をしていました。

 

あの日の私は、

あの子が100歳になった頃の自分が、

此処で生きている姿を想像することが出来ずに、

戯けた言葉を返してしまったけれど、

あの子の寂しそうな瞳の色を忘れることが出来ないまま、

真剣に、ずっと先の未来についてを考えました。

 

あの子が100歳になるまで、

私が生きることは可能なのかどうなのかを調べてみると、

ギネス世界記録には、世界一の長寿として、

122年と164日を生き抜いた方が登録されていることを知りました。

また、ギネス非公式記録であり、真偽は不明ですが、

256歳まで生きていたとされている方もいらっしゃるようです。

 

ものすごく頑張れば、私も、可能性としては、

ゼロではないのかも知れません。

 

せめて、あの子が社会に出るまでは、私は生きなければならないと、

自分の生に対して、初めて目標を立てたのは、

あなたを見送ったばかりの頃の私でした。

 

あれから、あの子の成長を見守りながら、

少しずつ、その目標が伸びていったのは、

長生きしてねと、

時々、あの子がくれる言葉があったからでした。

 

私が、この世を去る日には、

 

あの子の隣に、大切な人が居てくれたらいいな

 

あの子が、孫を抱く姿を見ることが出来たらいいな

 

もし、可能であれば、

老衰で、この世を去ることが出来たのなら、

あの子の悲しみは、減るのかも知れない と。

 

そこに具体的な年齢設定はないままに、

漠然とした時期を思い描いてきましたが、

あの子が100歳まで生きるつもりなら、

そして、

あの子が、それまで私の生を望んでくれるのなら、

叶えてやりたい。

 

せめて、私とのお別れの日は、

あの子が涙を流すことなく、

楽しかったと、ただ、懐かしく、

私との時間を振り返ってくれるように。

 

私の父が亡くなった日、

静かに涙を流していたあの子の姿を思い出します。

 

私が此処からいなくなる日には、

悲しい思いはさせないからね

 

もしも願いが叶うのなら、

あの子が100歳のお誕生日を迎える日を見守りたいと、

改めて、目標を立てました。

 

 

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同級生

あなたへ

 

先日、偶然に、インターネットで見つけたのは、

小学生の頃の同級生でした。

 

え?私、この人知ってる

え?凄い!

 

立派に活躍しているその姿に、

驚きと、彼ならそうなのかも知れないと、

納得の気持ちが入り混じったような不思議な気持ちで、

画面に映る彼の写真を、まじまじと見つめました。

 

彼とは、小学2年生の頃に、同じクラスだった記憶があります。

 

小学生の頃の同級生の中で、誰を覚えているかと聞かれても、

頭に浮かぶ顔は、そう多くはありませんが、

名前を見て、彼のことがすぐに分かったのは、

とても優しい男の子だったという強い印象があったからなのだと思います。

 

1年間だけ、同じ教室で共に学んだ彼が、

その後、同じ小学校を卒業したのか、

または、途中で転校してしまったのか、

その辺りの記憶はありませんが、

隣の席で、ニコニコと笑っていた彼のことが、鮮明に蘇りました。

 

彼が歩んだ略歴を見てみれば、

今のその場所に行き着くまでに、

どんなに努力を積み重ねてきたのかを窺い知ることが出来るような、

立派な足跡が並んでいました。

 

凄いね

 

画面に映る写真の彼を称賛しながら、

彼が歩んで来た道のりと、

私が歩んで来た道のりを、無意識に重ね合わせていました。

 

きっと、寝る間も惜しんで、

彼が勉強と向き合っていたであろう時間に、

私は、とても楽しく遊び呆けていました。

友達の輪が、どんどん広がり、

見るもの全てが、新しいものばかりだったあの頃の私は、

毎日、楽しいことへの探求を続けていました。

そんな楽しい毎日の中で、私は、あなたと出会いました。

 

やがて、新たな目標を持って、彼が一歩前へと踏み出す頃に、

私は、あなたと結婚しました。

幸せいっぱいの日々の中、あの子が生まれ、

3人家族という形の中で、

やっぱり、私は、楽しい毎日を過ごしていました。

苦労もあった筈ですが、

あなたと2人で、小さなあの子の成長を見守る毎日は、

本当に幸せで、楽しい日々でした。

 

そうして、彼が、更なる大きな進歩を遂げた頃、

私は、幼稚園生だったあの子と一緒に、

お遊戯会で、楽しく踊っていました。

いつの間にか、たくさんのことが出来るようになったあの子の成長に感動し、

思わず涙を流したのは、丁度、あの頃のことでした。

 

彼が、幾つもの進化を遂げ、様々な活躍をしている頃、

私は、小学生になったあの子の1年1年の成長を見守りながら、

少しずつ持つことが出来るようになっていった1人の時間と、

家族3人の時間を大切にしながら、

やはり、楽しい毎日を送っていました。

 

彼が、一歩一歩、今の場所へ向かって歩み続ける間に、

私は、ただ、幸せで、楽しい時間を過ごしていました。

それは、私にとって、何にも変え難い、宝物のような日々でしたが、

ふと、思いました。

 

私が、努力に努力を重ねるような、とても頑張った頃とは、

一体、いつだったのだろうかと。

 

こんな疑問を持ったのは、

どうしても叶えたい夢が出来たからなのだと思います。

 

あなたを見送り、

たくさん泣きながら歩んだ私がみつけた大きな夢は、

絶対に叶えたい夢です。

 

私が目指す場所までの道のりは、想像していたよりも、ずっと険しく、

思うように歩むことが出来ず、

大きなため息を吐いたり、自棄を起こしたり。

時には、あなたの遺影を見つめて、

弱音を吐いたこともありましたね。

 

偶然見つけた、かつての同級生の歩んで来た道のりと、

私が歩んで来た道のりを重ね合わせ、

漸く、納得することが出来ました。

 

私がただ、幸せで、楽しい時間を積み重ねて来た間に、

彼は、幾つもの険しい山々を超え、

漸く、今、そこに立っているだということに。

 

今、とても苦しいのも、頑張らなければいけないのも、当然だよ

俺が此処まで来るのに、何年掛かったと思っているの?

 

画面の向こう側、あの頃の面影を残した彼の笑顔は、

そんなふうに語りかけているようにさえ、感じました。

 

新しい夢を持つということは、

ゼロから学ばなければならないことだらけであり、

思うように歩むことが出来ないのは、当然なのかも知れません。

 

彼の立派な略歴を、もう一度、よく見つめ直し、

私も頑張らなくてはと、刺激を受けながら、

ページを閉じました。

 

幼かった頃の私に、とても優しくしてくれた彼は、

大人になった私に、

今度は、厳しさを教えてくれたような気がします。

 

偶然見つけた、小学生の頃の同級生。

かつて、机を並べて、共に勉強していた同級生から、

こんな形で刺激を受けることになる日が来るだなんて、

考えたこともありませんでした。

大人になるって、面白いものですね。

 

一刻も早く、前に進まなければと焦ったり、

時に、転んで、立ち止まったり。

相変わらず、不器用に歩む私ですが、

思わぬ偶然から、漸く、新たなものが見えたように思います。

 

 

 

 

バレンタイン -2021-

あなたへ

 

今日は、2月14日、バレンタインデーです。

こうして、あなたにチョコレートを送るのは、

今年で、23回目になりました。

  

あなたが何処にいても変わらずに、

毎年、あなたが喜ぶ顔を思い浮かべて、

チョコレートを選ぶ時間は、

私にとって、掛け替えのない時間です。

 

今年の私は、予め、下見へ行き、

どんなチョコレートが並んでいるのかを確認すると、

一旦、帰宅し、何日も時間を掛けて、ゆっくりと考えました。

あなたなら、どれが一番、喜んでくれるかなって。

 

やっぱり、あれがいいかな

いやいや、あなたなら、あっちの方が好みかも知れない

 

こんなふうに、あなたへの贈り物を迷った時間は、

とても楽しい時間でした。

 

今年は、あなたと出会ってから、

一番、時間を掛けて、あなたへのチョコレートを選びました。

 

今年も、私からの変わらぬ気持ちを受け取ってくれますか。

これからもずっと、愛しています。