拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

信号待ちの楽しみ

あなたへ 信号待ちの間、 大型トラックや、バスが曲がるところを見るのが好きになったのは、 いつからだっただろう。 特に、片側一車線の道路を、横幅ギリギリで曲がっていく姿は、 その運転技術の素晴らしさに、 惚れ惚れとしながら、眺めてしまいます。 思…

財宝が眠る部屋

あなたへ あの子が高校生になり、どのくらいが経った頃だったでしょうか。 それまでは、こまめに部屋の掃除をしていたあの子ですが、 徐々に掃除をしなくなり、汚部屋状態へと変わっていったあの子の部屋。 後で片付けるよ そんなあの子の「後で」は永遠にや…

もしも一度だけ、あなたに逢えるのなら

あなたへ もしも、一度だけ、あなたに逢えるとしたなら、 私は、どんな時を選ぶのだろう。 ふと、思い浮かんだ、 巡ってくるはずのない、たった一度だけのチャンス。 気が付けば、真剣に、その一度だけについてを考えていました。 私は、どんな時に、あなた…

53才の人

あなたへ 高校に上がり、少しずつ、将来への道が定まってきたあの子は、 時々、その人生設計について、話してくれるようになりました。 何才までに、どんなことをして、 何才になる時には、こうなっていたい。 あの子の具体的な人生設計は、 あなたの年齢の…

サスペンスドラマの楽しみ方

あなたへ あの子が眠った後で、あなたと一緒にテレビを観る時間。 サスペンス系のドラマを一緒に観ると、 必ずと言っていいほど、1話目で、 犯人、分かっちゃったよ って、 そんなあなたの言葉を、聞いていたように思います。 え?まだ言わないで そう言いな…

散歩

あなたへ 私が、初めて、ひとりで散歩に出掛けたのは、 丁度、1年前のことでした。 あの頃の私は、 ひとりで散歩に出掛ける日が来るだなんて、思ってもいませんでしたが、 緩く続けながら、 気が付けば、散歩をすることも、 私の趣味のひとつに加わっていま…

幼い頃のポーズ

あなたへ 横になって、こたつテーブルの下に頭だけを隠した、 幼かったあの子の姿を覚えていますか。 朝からたくさん遊んだ日の午後や、 いつもよりも早起きをした日に、よく見かけたあの姿は、 眠くなった時の、あの子のいつものポーズでした。 愚図るわけ…

みんな神様

あなたへ 例えば、機嫌が悪い時のあなた 例えば、怒っている時のあなた そんなあなたの言葉を、感情的になりながら、受け取ったあの頃の私には、 長い間、理解出来ないでいた言葉がありました。 あなたを見送ってからの私は、 あの頃、あなたが教えてくれた…

いつかの夢の言葉

あなたへ こちらでは、梅雨入りし、 ここ数日は、雨や曇りの日が続きました。 今日は、数日振りに、雲の隙間から、青空を見ることができました。 元気ですか 雲の隙間から見える空色を眺めながら、 相変わらず、あなたのことを思い浮かべた私は、 ふと、あな…

百獣の王

あなたへ 男の子は優しさを持って生まれる 女の子は強さを持って生まれる だから 男の子には強さを 女の子には優しさを教えなさい こんな言葉を目にしたのは、 もう、何年も前のことでした。 あなたって、ライオンみたい。 そんなふうに考えるようになったの…

コトバ -痕跡-

ふと周りを見渡して 寂しくなる こんな瞬間は あの日から 何度 経験したのだろう 4年と10か月前 私の側には 沢山の痕跡があった 彼が息を引き取り 家に帰ったあの日の気持ちは 今でも忘れられない つい最近まで 家族3人で暮らしていた痕跡 彼のお茶碗 お箸 …

格好いいままのあなた

あなたへ うちの主人、昔は格好よかったのよ 職場の先輩が、そんな話を聞かせてくれました。 今じゃ、ちょっとアレだけどね なんて言葉に、思わず、一緒に笑いながら、 私は、あなたのことを考えていました。 私は、格好いいあなたしか知りません。 もしも、…

始まりのないもの

あなたへ 私たちは、何度くらい、この世で出会い恋をしたのだろう。 今、私があなたに恋をしているのは、これで何度目ですか。 あなたは、運命の相手 私が強くそう思うのだから、きっと、そうなのでしょう。 では、いつから一緒にいたのでしょうか。 前世 そ…

ただ生きる

あなたへ あなたを見送ってから、これまでの日々の、 色々なことを思い返しながら、ふと、思いました。 あれだけ、辛く悲しい思いをしたのに、 今、私が此処に生きてるって、なんか凄いなって。 あなたがいないと生きていけない そんなふうに考えていたあの…

あなたの声

あなたへ あの子が大人になるまでに、 あの子の記憶の中には、 どれくらいのあなたのことが残っているのだろう。 そんなことを考えたのは、 あなたを見送り、どれくらいが経った頃だったでしょうか。 俺、お父さんの声が思い出せないんだ 夢に出てきたお父さ…

心の中の引き出し

あなたへ あなたを見送ってからの私は、 あなたのことについて、たくさんの考えごとをします。 今、あなたがいる場所 今、あなたはどんなふうに過ごしているのか 特別な日に、こちら側へ帰って来るあなたは、 どんなふうに帰ってくるのか 前世での私たちのこ…

私がこの世を去る時

あなたへ 自分の死というものは、 ずっとずっと、先の未来にあるものなのだろう あなたを見送る前までの私は、 何の根拠もないまま、 時に、この命が永遠であるかのように錯覚していたような気がします。 この世に生を受けたものは、いつか死ぬ あなたを見送…

懐かしいという感情

あなたへ 過去を振り返り、その頃を思い出す時の感情は、 いつでも、懐かしいという言葉に当てはまる気持ちを抱いていた私。 あなたが側にいてくれたあの頃は、 過去の良き思い出を振り返った時の感情は、 懐かしいという感情しか、知らなかったように思いま…

運転免許証

あなたへ 俺の心臓、もう、元には戻らないみたい 検査の結果によっては、心臓に機械を入れるんだって その時は、運転免許証が取り消しになるから、 俺はもう、運転することが出来ないんだって こんな話を聞いたのは、あなたが一般病棟へ移ることが出来てから…

贅沢な時間

あなたへ あの子が幼かった頃のことを思い出していました。 思えば、あの頃の私は、 滅多に取ることの出来なかった自分だけの時間を、 とても贅沢な時間だと考えていました。 あの子とふたりで、留守番してるよ そんなふうに、時々、あなたがくれた私だけの…

恋文

あなたへ 今日は、ラブレターの日って知っていましたか。 5月23日、恋文の日だそうですよ。 これまで、たくさんの想いを文字にして、 あなたへと綴ってきた手紙たち。 改めて、恋文だなんて、なんだか少し、照れてしまうけれど、 こんな日だからこそ、あなた…

出会うべく人

あなたへ あの高校へ行ったこと、後悔してる あの子が、初めてそんな言葉を口にしたのは、 高校1年生の頃のことでした。 友達と過ごす時間は楽しいけれど 勉強する意味が分からない これは、その頃から、度々、あの子が口にした言葉。 高校へ入学し、少しず…

コトバ  -もしも-

もしもあの時 少しだけ運命が違っていたら 私は今 何をしていたでしょうか その温かな手を握りしめて 私はあなたに 何を伝えたでしょうか もしもあの時 少しだけ運命が違っていたら あなたは今 此処で何をしていたでしょうか あなたのすぐ側で 私は何を学び …

肩揉み

あなたへ 幼い頃、お爺ちゃんの肩揉みをした記憶があります。 上手だね お爺ちゃんの背中越しに聞こえたその声が、とても嬉しかったことは、 大人になっても、時々、蘇った私の小さな思い出でした。 近頃、肩凝りが酷いあの子。 私なりのやり方で、あの子の…

前世のあなた

あなたへ 前世のあなたに、恋をしてしまいました。 なんて言ったら、 あなたは、どんな顔をするのでしょうか。 それは、夢の中での出来事でした。 山の麓にあるお墓で、お線香をあげ、手を合わせていると、 いつの間にか、私のすぐ側に、お爺さんが立ってい…

水筒

あなたへ 仕事用の水筒を眺めながら、ふと、 古くなってきたから、買い換えようか そんなことを考えた私は、 この水筒を買った日のことを思い出していました。 あれは、いつ頃のことだったでしょうか。 家族3人で、買い物へ出掛けた日。 水筒、買い換えたい…

今、私がやるべきこと

あなたへ 恋人がいない時や 出会いがない時は 自分磨きをしなさい そんな言葉があるでしょ? 私は今、次にあなたに会えた時に、 とびきりのいい女として出会うために、自分磨きに精を出しています。 なんて言ったら、 あなたは、どんな顔で笑うのでしょうか…

どうにかなるさ

あなたへ お母さん! 俺の質問に答えて! 突然、興奮気味に私の部屋に入ってきたかと思えば、 私に、幾つかの質問をしたあの子。 2+2は? 4+4は? 8+8は? 16+16は? 最初に浮かんだ野菜の名前は? 人参 そう答えた私に、あの子は、 怖い! 怖いよ!と大騒ぎ…

いつかの公園

あなたへ 携帯電話の機種を変えた私たちは、 そのカメラ機能を存分に楽しむために、 連休中には、絶対に公園へ行こうと話し合っていました。 いつもは行かない公園に行こう きっと、お母さんが気に入る場所だと思うよ そう言って、あの子が案内してくれた公…

令和最初の日の出来事

あなたへ 丁度、5年前。 家族3人で、 最後に過ごしたゴールデンウイークを、覚えていますか。 海に行きたい そんな私のリクエストに応えてくれたあなた。 岩場で、イソギンチャクや小魚を観察しながら、 初めて海にいるヒトデを見つけた私たちは、大興奮でし…