拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

専属運転手

あなたへ 近頃の私は、 あの子の専属運転手かのような日々を過ごしています。 仕事から帰ると、早々に、 ここに連れて行って欲しいんだけど なんてあの子の言葉に、 えー?今、帰って来たのに って、 そう言いながらも、また車へと逆戻りです。 特に狙われる…

配偶者

あなたへ 私が初めて、配偶者『有』に丸を書く機会があったのは、 今の職場へ勤めるようになってからのことでした。 結婚してから、初めての年末調整。 配偶者の欄、有の方を丸で囲みながら、 自然と思い浮かんだのは、あなたの顔でした。 あなたと結婚して…

私がいない世界 【おわりに】

www.emiblog8.com 私のこと、看取ってね は?嫌だよ 彼を見送ってからの私は、 あの頃の2人の、 こんな他愛もないやり取りを、何度思い出しただろう。 あの頃の私は、 彼なら、私が側にいなくても大丈夫だと、 本気でそんなふうに考えていた。 物知りで、聡…

私がいない世界 【13】

四十九日の法要を迎える前日、 私は、夢の中に入るという技術を習得した。 彼らに伝えたいことは、たくさんある。 何から伝えればいい? ずっと、幸せだったよ 私と結婚してくれて、ありがとう 愛してる あなたなら、きっと大丈夫 生まれて来てくれて、あり…

私がいない世界 【12】

彼は、仕事へ復帰し、 あの子も夏休みが終わり、学校が始まった。 私だけが此処にいないままに、彼らは、 少しずつ、日常生活に戻りつつある。 私に、死後のイロハを教えてくれたのは、 花火大会でお会いした、お義父さんだった。 肉体を持たない今、私は、…

私がいない世界 【11】

花火大会の翌日、私たちは、我が家へ帰って来た。 間も無く、お盆が明ける。 今は、深夜の時間帯。 とても疲れていたのだろう。彼は、テレビの前で眠ってしまった。 『こんなに痩せちゃって。目の下に、クマできてるよ。ごめんね。』 随分とやつれてしまった…

私がいない世界 【10】

突然、誰かに肩を叩かれ、驚きながら振り返ると、 そこには、 1年半前に亡くなった彼の父親が立っていた。 私は、驚いて、思わず悲鳴を上げてしまった。 『な、な、何で?お義父さん! あっ、あの、ご無沙汰しております。』 私はきっと、これまでにしたこと…

私がいない世界 【9】

告別式を終えると、そのままお盆に入った。 漸く、彼らは休むことが出来る。 明日は、彼の実家の地域で行われる花火大会だ。 「今年も来たら?気分転換にもなるかも知れないしさ。」 遠慮がちに、彼の家族が声を掛ける。 少し迷った顔をした彼は、あの子の顔…

私がいない世界 【8】

粛々と、式が進行する。 「最後のお別れです。」 そんな言葉と共に、彼とあの子を始めに、 参列してくれた皆が、私の棺の中にお花を入れてくれた。 私の棺の中は、ピンク色のお花で一杯になった。 皆がお花を入れ終えると、 私の胸元に、彼とあの子から、そ…

私がいない世界 【7】

「告別式の当日には、 故人様が使っていたお茶碗に、ご飯を山盛りにしてきてください。 それから、お箸、湯呑み、コップ。 こちらの粉を使って、団子を作って持って来て下さいね。 数は、地域の習慣などでも異なりますが、一般的には、6個とされています。 …

私がいない世界 【6】

この姿になってから、私が声を上げて泣いたのは、 自分が息を引き取った、あの日の夜だけだ。 あの日の夜に、テレビから聴こえてきたのは、 あの子が好きなアニメの主題歌だった。 あの日は、このアニメの映画公開日だった。 静かに流れる音楽も、歌詞も、 …

私がいない世界 【5】

意味もなく、家の中をウロウロする彼に、 私は何度、同じ言葉を掛けただろう。 『ねぇ、あなた、ご飯食べて?』 何度もそう問いかけているのに、彼は全然話を聞いてくれないの。 あの子にだけご飯を食べさせる彼は、何をするでもなく落ち着かない。 『ねえ!…

私がいない世界 【4】

疲れた 眠い お腹が空いた そんな感情すら残ってはいない。 ただ、もし出来れば、少しだけ、そっとしておいて欲しい。 もう何も考えたくないし、誰とも話したくない。 そんな気持ちを、胸の奥へと閉じ込めて、 告別式までは、どうにか乗り越えなければならな…

私がいない世界 【3】

私たちは今、葬儀社にいる。 自分の告別式の打ち合わせに参加するだなんて、 なんとも奇妙だけれど、 彼とあの子が並んで座るその隣に、一応、私も座ってみた。 私の前にだけ、お茶がないこの光景に、 私は、もう、この世のものではなくなってしまったのだと…

私がいない世界 【2】

『愛する夫と息子を遺して、こんなことになるなんて! なんてことなの?』 まずは叫んでみた。 こんなに大声で叫んでいるのに、誰も見向きもしない。 夫と息子に看取られて、私は、たった今、息を引き取った。 半透明の自分の手のひらを見つめて、小さく溜息…

私がいない世界 【1】

ご臨終です その言葉を合図に 彼らは たくさんの涙を流した まだ温もりが残っているであろう手を握り まだ血色の良い頬に触れ まるで その感覚を体に刻みつけるかのように 彼らは私の肉体から手を離そうとはしなかった そんな2人の側で 私はただ 彼らを見つ…

11月22日

あなたへ 今日は、11月22日。 いい夫婦の日 だそうですよ。 カレンダーをよく見てみれば、 数字の語呂合わせや、記念日、 1年の中には、たくさんの、 いつもありがとうを伝える機会があるように思います。 いい夫婦の日。 カレンダーを眺めながら、 あなたと…

残りの命を知らないままで

あなたへ あの頃の私が、あなたとのお別れの日を知っていたのなら、 今とは少しだけ違う何かが残っていたのでしょうか。 どうにもならないことであることを理解しながらも、 私は時々、考えてしまいます。 どんな時間を過ごせれば、良かったのだろうかって。…

抜け落ちた記憶

あなたへ 私は、どれだけの記憶を、 あの夏に置いてきてしまったのだろう。 あなたが好きだった缶コーヒーを眺めながら、 そんなことを考えていました。 先日、ふと、思い出して、 あなたにお供えした、缶コーヒー。 実はね、 あなたが好きだった缶コーヒー…

愛おしい時間

あなたへ 寒さに向かうこの季節、 思えば、あの子は、毎年、今くらいの時期になると、 体調を崩すように思います。 今年も例外なく、体調を崩したあの子は、 熱はないけれど、頭が痛い 咳は酷くはないけれど、鼻水が止まらないと、 なんだか、とても辛そうな…

缶コーヒー

あなたへ あの缶コーヒー、久しぶりに飲みたいな 買って来てよ あなたは、そんなふうに、 私に話し掛けてくれていたのでしょうか。 早速、あなたの場所へと、缶コーヒーをお供えしながら、 あの頃のあなたのことを思い出していました。 庭の草取りを担当して…

もしもの世界をみつけることが出来なかった私たち

あなたへ 俺ね、今の自分、好きなんだ あの子がそう話してくれたのは、 あの子の将来の夢について話し合っていた時のことでした。 今の自分がいるのは、 お父さんが此処にいないからなのだと、 あの子のそんな話に、 辛く、悲しく思いながらも、 私は、惹き…

心と心

あなたへ あれから、1ヶ月と少しが経ちました。 夢の中、 あなたがプロポーズをしてくれた時のことを思い出していました。 寂しがり屋な私ですが、 あの日からの私の心は、ずっと満たされたまま、 あなたからの愛が溢れています。 あなたに逢いたいことに変…

立冬の奇跡

あなたへ あなたが知らない、 あの子の中のジョニーの存在。 そんなに大したこともないんでしょ? なんて、思っているでしょうか。 とんでもありません。 毎朝、毎朝、起こしても、起きないあの子を起こすのが、 どんなに大変なことなのか、 いつでも目覚め…

気持ちを伝える大切さ

あなたへ あなたを見送ってからの私が、一番変わったところは、 言葉にして、気持ちを伝えるようになったことです。 思い返してみれば、あの頃の私は、 言葉にしなくても、気持ちは伝わるものだと思っていました。 家族だから いつの間にか、そんなふうに、 …

あの子への最初のプレゼント

あなたへ 先日、あの子と、名前の話をしました。 あの子の話に出てくる友達の呼び名は、その殆どが苗字ですが、 下の名前は、こんな名前なんだよと、 色々な子たちの、下の名前を教えてくれました。 どの子も、とても素敵な名前ばかりで、 その名を聞く度に…

親孝行

あなたへ 今日の私が、一瞬、 心穏やかでいられなくなったのは、 親よりも先に死んだら、地獄行き こんな言葉を目にしたからでした。 大抵の嫌なことは我慢出来るけれど、 あなたのことだけは、我慢出来ないの。 その文字を見つめながら、 思わず想像したの…

今の私が見ている景色

あなたへ あの頃の私の気持ちを綴った文字を眺めながら、 得体の知れないアレを思い出していました。 あなたを見送ってからずっと、 私は、得体の知れない何かに追われていました。 どんなに頑張って逃げても、 得体の知れないアレは、すぐ背後にまで迫り、 …

台風の日の優しい嘘

あなたへ 今年も、あなたの実家から、キウイフルーツが届きました。 今年のキウイフルーツも、大粒で、とても美味しそう。 食べごろ間近になったら、 あなたのところにも、お供えしますね。 早速、あなたの実家へとお礼の電話を掛けると、 いつも通り、元気…

ハロウィン -2019-

あなたへ 今日は、ハロウィンです。 昨年から、ハロウィンのイベントへと出掛けるようになったあの子は、 今年もまた、嬉しそうに、友達と出掛けて行きました。 あれは、昨年のことでした。 初めて出掛けるハロウィンのイベントのお供にと、 邪魔にならない…