拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 8

あの子は、この家を出てからも、時々、顔を出してくれる。それは、ひとりになった私を気遣ってのことだろう。あの子のこういう優しさには、本当に感謝している。 今日は、この辺りで仕事があったからと、顔を出してくれた。 あの子は、家に帰ってくると、ま…

KANATA 7

彼が側にいる。 それは、彼を見送ってから、 これまでの私も、度々感じてきたことだった。 例えば、泣いている時や、寂しい時には、いつでも、彼の温もりに似たふわりとしたものが側にあった。 彼が最後に話してくれた言葉を反芻する。 あれは、やはり、彼だ…

KANATA 6

『・・・うん。長い間、ひとりにして、悪かった。』 「え?急に、どうしたの?」 一緒に笑っていた彼は、急に真面目な顔をして、本当は、ずっと一緒にいたかったことや、この世を去らなければならない理由があったことを話してくれた。 『俺は、どう頑張って…

KANATA 5

翌朝は、いつもよりも早くに目が覚めた。昨日のことを思い出す。あれは夢だったのだろうか。彼の、また明日の声が鮮明に蘇る。 「夢・・・だったの?」 慌てて飛び起きて、携帯電話の画面を確認してみると、 やはり、ロックを解除した右下には、【KANATA】の…

KANATA 4

「え?」 画面を凝視したまま、動くことが出来なかったのは、 これが写真ではないと分かったからだ。 何故なら、彼の背景に映るものが、動いている。 見たこともない花が揺れ、彼の後ろを、 ゆっくりと馬が歩いて行ったのが見えた。 瞬きをすることも忘れて…

KANATA 3

翌日も、いつも通りに、目が覚めた。 「おはよう。」まずは、夫の遺影に、朝の挨拶をするのは、 あの頃から、ずっと何年も欠かしたことのない私の朝の習慣だ。 それから、お化粧をして、身なりを整える。これも、若い頃から変わらない私の習慣。 年を重ねれ…

KANATA 2

亡き夫に手紙を書き始めてから、もう、何年が経っただろう。 夫が亡くなってから、2年が経とうとする頃から、数十年、私はこうして、 夫への手紙を書いては、インターネットに掲載し続けてきた。 きっと、空の彼方にいる夫の元へ、この手紙が届きますように…

KANATA 1

あなたへ あなたを見送ってから、 これまでの日々のことを振り返っていました。 あの日から、私の歩むスピードは、随分と、ゆっくりでしたが、幸せのカケラを、ひとつ、ひとつ拾い集めながら、自分のペースで歩んできました。 あなたが此処にいてくれたら そ…

秋の肌寒さに

あなたへ 寝起きの肌寒さに、思わず、長袖の上着を羽織ったのは、 今朝のことでした。 ここ数日のこちらでは、朝晩の肌寒い空気に、 より一層、秋の深まりが感じられるようになりました。 つい最近までは、 エアコンがなくては眠ることが出来ませんでしたが…

元気に会える日を楽しみに

あなたへ コロナウイルスに怯えながら生活をするようになってから、 何ヶ月が経ったでしょうか。 緊急事態宣言が解除され、 以前のような生活に戻った人。 自粛生活を心掛ける人。 その生活の仕方は、様々ですが、 我が家では、自粛を心掛けた生活を続けたま…

永遠の親孝行

あなたへ 子供はね、3歳までに親孝行をするんだよ 3歳までは、本当に可愛いんだよ 天使だね その後はね、お金だよ 子供が大人になるまでに、いくら掛かるか知ってる? 1000万円以上掛かるんだよ 3歳までに、その可愛さで、一生分の親孝行をしてもらったら、 …

空に描かれた手紙

あなたへ あなたから、あの子へ宛てた手紙を見返していました。 これは、あの子の部屋の大掃除で見つけた、いつかの幸せのカケラ。 何度読み返しても、やはり、 いつ、どんな時の手紙であったのか、思い出せないままに、 この文字に込められた、あなたの想い…

新しい発見

あなたへ 高校卒業を機に、髪を伸ばし始めたあの子は、 近頃、ヘアアイロンを器用に使って、 パーマ風の髪型を楽しんでいます。 こんな髪型、どうかな あの子から、突然、パーマヘアの画像を見せられたのは、 数週間ほど前のこと。 どうだろう 全く想像のつ…

秋の気配

あなたへ 静かな公園を散歩したい 長かった梅雨が明け、連日の青空を眺めながら、 お気に入りの公園の景色を思い浮かべていたのは、 8月に入ったばかりの頃の私でした。 足の痛みに耐えられず、何処へも行けないままに、 今年の夏は、ベランダに出ては、 空…

最後の我儘

あなたへ あなたに最後の我儘を言ったのは、 夢の中でのことでした。 あれは、あなたを見送り、間も無くの頃のこと。 夢の中のあなたに、 まだこっちに来てはいけないと諭され、 あなたの側へ行くことを諦めた私は、 あなたに我儘を言ったのでした。 それな…

普通に歩ける素晴らしさ

あなたへ 足を怪我しました こんな手紙を書いたのは、5月のことでしたね。 痛みが引いては、また痛くなる。 そんなことを繰り返しながら、 裸足であれば、痛みはないけれど、 靴下や靴を履くと、激痛が走ることが当たり前の毎日へと変わっていったのは、 い…

誓いの言葉

あなたへ 病める時も 健やかなる時も 富める時も 貧しき時も 妻として愛し敬い 慈しむ事を誓いますか これは、私たちの結婚式の時の、誓いの言葉。 あの日、私の右側から聞こえたあなたの声は、 今、思い出しても、なんだか笑ってしまうくらいに、 とても大…

今できる今度の約束

あなたへ お盆が明けて、 そちら側へ帰ったあなたの楽しそうな様子を思い浮かべたのは、 昨年のお盆が過ぎた頃のことでした。 お盆のお土産をみんなで持ち寄って、 『お盆明けのパーティ』 そんなイベントがあるかも知れないなって。 あの日の私は、浮かない…

盆明けの日の温もり

あなたへ 昨夜の、少し遅い時間のことでした。 あの子と他愛もないお喋りをしていると、 突然にあの子が言いました。 あれ?お線香の匂いがする って。 私は、お線香の匂いを感じることはなかったけれど、 あの子の言葉のすぐ後に、背中がとても温かく、 あ…

静かなお盆

あなたへ 今年のお盆も、帰って来てくれて、ありがとう。 今年の我が家は、どうでしたか。 ゆっくりと、寛いでくれたでしょうか。 お盆初日から、連日に渡り、 見上げた空には、龍に似た形の雲を見つけました。 それは、 その姿が見えなくなってしまった代わ…

コトバ -幸せな人-

私は とても幸せな時間を知っている 好きな人が出来たの 友人にそう報告する直前の 胸の奥が擽ったい瞬間を知っている 好きな人からの連絡を待つ時間は なんだかソワソワと落ち着かなくて 着信音が聞こえた時には ほんの少しだけ胸の奥がキュッてなる そんな…

お盆 -2020-

あなたへ 甘い缶コーヒー 炭酸飲料 お菓子 特に、チーズ味のスナック菓子と、 アーモンドが入ったチョコレートは外せませんね。 そうそう、海老の絵が描いてある、あのお菓子も、好きでしたね。 それから、 先日約束していた、大きい缶に入ったパイナップル…

コトバ -カウントダウン-

7 6 5 4 3 2 1 0 これは誰にも話したことのない 8月8日で止まるカウントダウン 私の中に このカウンターが設置されたのは 彼が亡くなった翌年のことだった カウントダウンが始まると 私にまとわりつく夏の暑さに 息が出来なくなるような苦しさを覚える 目の…

あの頃のあなたに逢いに

あなたへ 昨日のあなたの命日は、 あの子と2人で過ごしました。 昨年も、一昨年も、あなたの命日には、家族で過ごす日として、 あの子と2人で、外出をしましたが、 今年は、コロナウイルスの影響から、家の中で過ごすことにしました。 何をしようか こんなあ…

あなたを想う日 -2020-

あなたへ いつもよりも早くに目が覚めた私は、 朝から空を見上げながら、 あなたのことを想っていました。 あなたを見送ってから、今日で6年が経ちました。 私にとって、この6年間を、 もう、と表現すべきなのか、 まだ、と表現すべきなのか、 相変わらずに…

コトバ -夏の音-2020

今年もまた夏が来たよ 待ちわびた青空を見上げながら 空の彼方にいる彼に 夏の始まりを報告する 梅雨明けの太陽が やけに眩しく感じたのは ずっと 雨や曇り空ばかりを眺めていたせいだろうか 夏の音を聞きながら 目を閉じると 彼と出会った最初の夏から順番…

短い夏休み

あなたへ 夏休み、お盆だけになるかも知れないんだって あの子から、こんな話を聞いたのは、 学校への登校が始まり、間も無くの頃のことでした。 コロナウイルスの影響により、入学式もないままに、 オンライン授業から始まった、専門学生としての新しい生活…

あなたの場所

あなたへ ねぇ、あなた これ、気に入った? 素敵だよね 色合いも、大きさも、高さも、全部、丁度いい きっと、あなたも、気に入ってくれたよね 先日からの私は、 何度、あなたにこんな言葉を掛けたでしょうか。 七回忌の法要を、行わないと決断した私たちで…

想いがあれば

あなたへ 本当なら、今年は、あなたの七回忌の法要を行う予定でした。 あなたにとっても、私たちにとっても、大切な節目を迎えますが、 私が、悩んでいたのは、コロナウイルス感染症のことでした。 非常事態宣言が解除されたのは、5月のこと。 まだまだ油断…

夏の始まりの日

あなたへ こちらでは、漸く、梅雨が明けました。 昨日までの雨や曇り空の毎日が嘘のように、 今日は、朝から、とても綺麗な青空が広がりました。 青空を眺めるのが、ただ、嬉しくて、 今日の私は、朝から何度も、ベランダに出ては、空を眺めました。 私は、…