拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

emi′s fantasy  あなたの願いが叶いました

あなたの願いが叶いました【16】

少しずつ、私が住む街の灯りが見えてきた。 間も無く、おじいさんとのお別れの時だ。 「今日は、素敵な時間をありがとうございました。」 隣に座るおじいさんに微笑むと、彼は、満足そうに笑った。 チャンスとは、いつでも、思っていたものとは違う形で、 突…

あなたの願いが叶いました【15】

帰り道。 私は、マザーリーフへと乗り込んだ瞬間に、盛大に泣いた。 気持ちを抑えることなんて、出来なかった。 本当は、彼に涙を見せるつもりなんてなかった。 笑顔で、その限られた時間を過ごしたかったのだ。 それなのに、彼の姿を見た途端に、大泣きして…

あなたの願いが叶いました【14】

「あのね、あのね・・・」 ここに来る前に、ちゃんと考えて来たんだ。 彼に伝えたいこと。 どんな時間を過ごしたいのか。 それなのに、彼を目の前にした私は、何一つ言葉になど出来なかった。 想いを全部伝えたいのに、 それを伝えるだけの言葉など、初めか…

あなたの願いが叶いました【13】

私の名前を呼ぶ彼の声が聞こえる。 この耳にハッキリと、彼が私を呼ぶ声が聞こえる。 ソファーから対面した壁の、アーチ型に光る場所の前に、彼が立っていた。 走って彼のところへ飛び込んで行けば、彼は、私を抱き締めてくれた。 彼の名前をただ呼びながら…

あなたの願いが叶いました【12】

初めて連れて来られた天国という場所は、 非常に分かりやすく、大きな看板が建ててあった。 『天国』 私の半歩後ろを歩くおじいさんは、看板を見上げながら、 この看板は、見る人が使う言語に合わせて、文字が変化するのだと教えてくれた。 大きな看板の横を…

あなたの願いが叶いました【11】

「ふむ。何故とな? お前は、神なんていないと本気で思ったことがあるじゃろ?」 「えっと、まぁ、あった・・・かも知れませんね。」 思わず語尾が小さくなる。 「神なんていないとしながらも、ほんの少し、神を恨んだな?」 この質問への返答は、非常に気ま…

あなたの願いが叶いました【10】

将来の夢。 それが、本当に望むことに該当するのだそう。 彼らが叶えてくれるのは、 大きな夢へと向かって歩むための小さな願いに過ぎないのだという。 真の願いとは、自分で叶えるから意味がある。 だから、それについては、誰も手出しが出来ないのだと話し…

あなたの願いが叶いました【9】

彼のような存在は、そこらへんにたくさんいるけれど、 彼らの方から姿を見せようとしなければ、誰も見ることは出来ないのだと言う。 人間の前に姿を表す時には、 私の隣に座っているおじいさんのように、 人間にとって分かりやすい姿であることが多い。 けれ…

あなたの願いが叶いました【8】

「ずっと昔、わしらは、神の元、ただ、ふわふわと漂うような存在じゃった。」 その存在に、始まりはなく、初めから、そこにいたのだと言う。 性別もなければ、年齢もない。 ただ、初めから存在し、漂うものだった。 やがて地球という星が生まれ、そこは、青…

あなたの願いが叶いました【7】

街並みの光は、やがて見えなくなり、 光り輝く星だけの景色へと変わった。 飽きもせずに、星たちを眺めていた私は、 漸くここで、たくさんの疑問が浮かんできた。 いや。 これは、本当なら、 一番初めに聞かなければならなかったことなのだろう。 「あの、と…

あなたの願いが叶いました【6】

「天国・・・まで、お願いします。」 私の言葉に、一瞬、動きを止めたおじいさんは、こちらをじっと見つめた。 白くて長い眉毛の奥にあるブルーグリーンの瞳が一瞬、 悲しげに揺れたのは、気のせいだったのだろうか。 次の瞬間には、巨大なルーペを手に、地…

あなたの願いが叶いました【5】

「なんだね?そのハッキリしない態度は! はぁ・・・人間は分からんわ。 さっぱり分からん!ハッキリしなさいよ! この爺が、わざわざその願いを叶えに来てあげたというのに、全く・・・ あなたねぇ、 それなら、何故、空を見上げて、彼に逢いたいなどと言い…

あなたの願いが叶いました【4】

そういえば、おじいさんは、さっきから、支度をしろと騒いでいる。 私の夢を叶えてくれるとも。 一体、何のことだろう。 「えっと、どこに、ですか?」 「あれ?空を見上げて、お願いしてなかったかな?彼に逢いたいって。 さて、その彼とは、何処にいるのか…

あなたの願いが叶いました 【3】

一言も発することが出来ないままの私を、突然に急かし出した。 「いつまで座っているのです?さぁ!さぁ!支度を!」 突然現れた目の前の小さなおじいさんは、 忙しなく右へ左へと小走りしながら、急げ急げと繰り返す。 体が動かないままの私は、たくさんの…

あなたの願いが叶いました【2】

「迎えに来たよ。」 深く静かで、とても優しい声で目が覚めた。 無意識に携帯電話の画面を確認すれば、0:00。 眠りに就いてから、然程、時間は経っていない。 ボーッとする頭のまま、目を擦ったところで、窓を叩く音が聞こえた。 そして、再び聞こえたのは、…

あなたの願いが叶いました【1】

神様、お願いします。 どうか、彼に逢わせて下さい。 ほんの少しだけでいいのです。 ほんの少しだけ・・・ 私は時々、空を見上げては、 叶わぬ願いと知りながらも、こうして、願いを口にしてみる。 もう一度だけ、彼に逢いたい と。 そうして、 たくさんの大…