読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

奇跡

あなたへ


あなたが病院に運ばれた日の事を、覚えていますか?


あの日は、いつも通り、仕事に出掛けた私だったけれど、

会社に着くなり、あなたからの電話で、


救急車で総合病院に行くから、来て。


なんて、苦しそうなあなたの声に、頭の中が真っ白になりました。


総合病院に着くと、先生から、これからすぐに手術をしますと説明がありました。


先生の話の殆どは、私の耳を通り抜け、

ただ、言われるままに、サインをした事だけを、覚えています。


突然に、心臓を患ったあなた。


手術室に運ばれるあなたの顔を見て、人目も気にせず、私は、泣きながら、


何で?何で? って・・・


絶対に、頑張ってね

 

そう言って、あなたを見送ったんでしたね。


それから、手術が終わるのを、泣きながら、ひとりで待つ時間は、

永遠にも感じられる程に、長かった。


そうして、ICUで、あなたと対面した時には、本当に、全身の力が抜ける程でした。


上手く言葉が出ない私に、あなたは、手術室での様子を話してくれましたね。


酸素マスクをしていたけれど、

そんなふうに話をしてくれるあなたの顔を見て、

私は、とても安心した事を覚えています。


翌日には、お腹が空いたと、機嫌が悪いあなたを見て、何だか、嬉しかった。
だって、お腹が空いて、私に八つ当たりする元気があるんだもの。
絶対に、良くなるって、そう思いました。


それから、間も無く、味の薄い飲み物や、飴を少しづつ、口に入れていきましたね。


薄い味の飲み物と飴を食べてもいいですよ


そんな看護師さんの言葉が嬉しくて、

私は、張り切って、売店まで、買い物に行ったんでした。


あの時のあなたったら、

欲張って、飴をいくつも口に入れようとするから、

喉に詰まらせないかと心配だったけれど、

何だか、嬉しくて、可笑しかった。


そうして、少しづつ、食事が取れるようになり、

一般病棟に移れるまでに、回復しましたね。


時々、あの時の事を思い出します。


本当はね、

あなたが救急車で運ばれたあの日、先生からは、

今夜が峠 持って、2~3日

そんなふうに、言われていたんですよ。


でも、あなたは、そこから回復し、

一般病棟では、数日ぶりに、あの子と対面した時には、

あなたは、ちょっと照れながら、よっ!なんて、元気にあの子に声を掛けましたね。


あなたと、あの子と、私。


たったの数日でしたが、また、家族3人の時間を、過ごす事が出来ました。


ちょうど、あの頃は、あの子の夏休みが始まった頃で、

あの子の成績表を見て、嬉しそうに、笑いましたね。

そして、あの子の頭を撫でながら、よく頑張ったねって。

あの時のあの子の嬉しそうな顔。あなたも覚えているでしょうか。


あなたの笑顔も、怒った顔も、拗ねた顔も、いたずら顔も、

元気だった時のあなたと何も変わらなかった。


思えば、あの時、快方に向かい、一般病棟に移れた事は、

奇跡だったのかも知れませんね。


一般病棟で過ごしたあなたとの時間は、本当に幸せな時間でした。


あなたに逢いに行くと必ず見せてくれた、あなたの嬉しそうな顔。


今でも、はっきりと覚えています。