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拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

コトバ -大切なもの- 

彼を看取った後 しばらくの間
彼と過ごした時のまま
部屋のものを何も変えずに時間を過ごした


結婚したばかりの頃は広く感じた家の中も
気が付けば時間と共に 家族3人のものが増えていき
いつの間にか 当時よりも狭くなっていたけれど
それは家族3人で時を過ごした証に見えた


当たり前に
そこに彼のものがある生活は心地良くて
彼が帰ってくる気がした 


部屋の隅にまとめられた彼の仕事道具は
きっと自分で使いやすいようにまとめられたものなのだろう
時々丹念に手入れをしていた彼の姿を思い出す


押入れの中
引き出しを開けると
彼の仕事着がたくさんあって
その日の仕事に合わせて着るものを準備する彼の姿が目に浮かんだ


車やバイクが趣味だった彼
関連の雑誌は綺麗に並べられていた
ゆっくりと寝転がって
雑誌を読んでいた彼の横顔にチョッカイを出したら

迷惑そうだったけれど一応相手にしてくれた彼の顔が可笑しかった


寂しくなると部屋中を見回し
彼が確かにそこにいた証拠を探した

 


本当に大切なものはなんだろうか


それは彼を見送り

漠然と引っ越しを意識するようになってから考えるようになった事だ


全部大切


何も変えないまま
ずっとこのままでいたい


そんな気持ちと戦いながら
少しずつ家のものを処分していった


彼のもの
私のもの
あの子のもの


ずっと大切だと思っていたものを
ひとつひとつ 今の自分達に
必要なのかどうか考えた


少しずつシンプルになっていく身の回りには
本当に大切なものだけが残った


今の自分にとって本当に大切なものは
いつでも同じわけじゃなくて
形が変わるものもある事を知った


本当に大切だと思うものだけを持って一歩踏み出したけれど
そこにはちゃんと

彼の優しさも 温かさも そこにいた証も残った


あの頃より少しシンプルになった今
本当に大切なものが何なのか
分かった気がした

 

 

 

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