拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

優しい嘘

あなたへ


あなたを見送ってからも、
夕方に車の音が聞こえると、
つい、手を止めて耳を澄ませてしまう私は、ここへ越してきても相変わらずで、
その癖は抜けないようです。


今日もまた、車の音に、手を止めて、
思わず苦笑いしながら、
この時間に、ワクワクとした気持で、
あなたを待っていた頃を思い出しました。


休日が少なく、仕事が忙しかったあなただけれど、
仕事が少し早く終わった日には、
電話をくれましたね。


今から帰るよ。3人で出掛けようか って。


近所のショッピングセンター、食事。
時間がないながらも、
家族の時間を作ってくれていましたね。


そんな時のあなたは、
疲れた顔を見せる事はなく、
必ず、笑顔で帰って来てくれました。


玄関を開けると、
たたいま。行こうか って。


そうして、家に帰ると、
いつの間にか、眠っていたあなた。


それでも、
疲れていた訳じゃないと、
寝起きのあなたは、
優しい嘘をついてくれました。


俺は嘘が嫌いだ


そう言いながらも、
いくつもの優しい嘘を遺してくれましたね。


きっと、これから先も、
夕方の車の音に、私は、思わず手を止めるのでしょう。


そうして、あなたの優しい嘘と、
あの頃、ワクワクとした気持で、

あなたを待っていた時間を思い出すのでしょう。