拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

約束

あなたへ


あれは、あなたが一般病棟へ移り、間も無くの頃でした。
やっと、ICUから出られたあなたは、
院内を自由に動けるようになり、
誰もお見舞いに来ていない時間には、
院内のコンビニへ出掛けるようになりましたね。


あなたが、元気だった頃に、よく飲んでいた炭酸飲料。


病院のコンビニには売っていないから、
買って来て欲しいと言われた事、
今でも、よく覚えています。


あの時、私は、
分かった。今度買って来るねって、
約束したんでした。


何処にでも売っていると思っていた、その炭酸飲料は、
何故だか、近所のスーパーにも、自販機にも、どこにも売っていませんでした。


何件ものコンビニやスーパーを回ったけれど、どうしても、見当たらず、


ごめんね
何処を探しても見当たらなかったよ


そう言って、代わりのものを手渡した時の、あなたのちょっと、残念そうな顔が、
ずっと、忘れられませんでした。


あなたを見送ってからも、買い物に出掛けると、
あの時のあなたとの約束を思い出しては、
ドリンクコーナーで、あの炭酸飲料を探しました。


あれからも、ずっと、何処にも見当たらずに、
あなたにお供えする炭酸飲料は、
あの時、代わりに手渡した、
別な炭酸飲料でした。


炭酸飲料が好きだったあなた。


きっと、あの時、病院で、私が手渡したものは、
あの時のあなたの、
2番目に好きだったものなのでしょう。


先日、買い物へ行くと、
あなたが飲みたがっていた炭酸飲料を見つけました。


その時、私は、宝物を見つけたような気分で、
一本をカゴに入れました。


家に帰り、早速、あなたにお供えしたけれど、
こんなに時間が掛かってしまいました。


あの時、約束したものね
やっと見つけたよ


そう言って、手を合わせたけれど、
あの日の私は、
あなたの顔を、まともに見る事が出来ませんでした。


あの日のあなたは、
どんな顔で、こちらを見ていたのだろう。

 


約束したのにね。


ごめんね
間に合わなかったよ。