拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

昇段試験

あなたへ


先日、あの子が習っている武道の昇段試験がありました。


先生に叱られて以来、
あの子のやる気は、前にも増して、
家でも、熱心に練習を重ねて来ました。


試験当日は、朝から緊張な面持ちで、
何度もトイレに入るあの子。
サボっていた期間が勿体なかったと、後悔の言葉もありました。


そうして、あなたに、長い時間、手を合わせたあの子は、

引き攣った顔のまま、出掛けて行きました。


昇段試験は、
受かれば、帰りは午前中。
落ちたら、帰りは午後。


家で、ひとり、待っていた私は、
時計ばかりが気になりました。


お昼に近づいても、一向に帰って来ないあの子に、
落ち着かない気持ちの私は、
何度、あなたに話し掛けたでしょうか。


絶対に大丈夫だよね
の言葉から、お昼を過ぎた頃には、
ダメだったのかな
そんな風に変わっていきましたね。


私の、どの言葉にも、何故だか、微笑んでいたあなただったけれど、
午後1時を過ぎる頃には、
あの子が帰って来たら、なんて慰めようかと、
言葉を探していました。


そうして、やっと、帰って来たあの子。


ひと息ついて、

受かったよ と。


予定よりも、待ち時間が長く、帰りが遅くなったようでした。


さっきの、俺の顔を見たお母さんの顔、面白かったよ
落ちたと思ったでしょ?
こんな顔だったよ


なんて、私の顔を再現し、大笑いされてしまいました。


無事、昇段する事が出来、
より一層、やる気を取り戻したあの子の笑顔には、
自信が見えました。


あの日、ずっと、微笑んでいたあなたは、
実は、こっそりと、
あの子の試験を見に行っていたのでしょうか。


時々、心配性だったあなた。


陰から、そっと、
あの子を見守るあなたの姿が、目に浮かびました。