拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

不思議の始まり

あなたへ


思い返せば、私に、不思議な出来事があったのは、あれが始まりでした。


あなたの容態が、急変したあの日から、しばらくの間、
私は、過呼吸に苦しみました。


あなたの検査手術のあったあの日、
院内であの子と待ちながら、
私は、翌日に控えたあなたの一時帰宅の事を考えていました。
一緒に、どんな1日を過ごそうかと、あなたが喜ぶ顔を、思い浮かべていました。


そんな中、突然、私たちは、呼び出されました。
先生が待つ部屋へ向かう時は、嫌な予感しかしなかった。


部屋に入ると案の定、
深刻そうな先生の顔に、私は、逃げ出したい気持ちでした。
何も聞きたくない
そんな気持ちで、先生の前に座りました。


手術中にあなたの容態が急変したこと、
親御さんが健在でしたら、すぐに連絡を取ってくださいと話がありました。


すぐに連絡を取ってください


その言葉が意味することに、私は、立ち上がる事が出来なかった。


やっとの思いで、あなたのお母さんに連絡を取ると、
指定された小さな待合室で、あの子と2人、
無言で、あなたを待ちました。


思いもしなかった展開に、
もしもの事があったらと、一番最悪な状況しか考えられなくなった私は、
頭の中が混乱し、呼吸が乱れ、
自分でも、何が起きているのか分からない状態の中、
誰か呼んでくるから
あの子の声が、遠くから聞こえました。


私がしっかりしなくてはいけない時に、
私までもが、運ばれてしまったあの日から、
しばらくの間、過呼吸に苦しむ事になりました。


あの日から、
どのくらいが経った頃だったでしょうか。


家にひとりでいた私は、
1年と半年程前に亡くなったあなたのお父さんへ、
あなたを助けてほしいと、お願いの気持ちで、
あなたのお父さんの事を考えていました。


すると、
ふと、私の頭の中に、
心配しないで待ってろ
そんな言葉が浮かびました。


不思議ですが、その時、私の気持ちが、急に軽くなった事、
よく覚えています。


あなたのことは不安で堪らないままなのに、
何故か、緊張だけが解れるような、不思議な感覚でした。


そして、あの日から、
私は、過呼吸で苦しむことがなくなりました。


それまで生きて来て、あんなふうに、
外から言葉が入ってくるような、
不思議な感覚は、初めてでした。


もしかしたら、余りにも辛すぎる状況に、
自分を守るために、
私が作り出したものだったのかも知れません。


何の確証もない不思議な言葉。
あの頃の私は、あの言葉を、お告げと呼びました。


あなたを見送り、
時々、あなたが側にいてくれると感じる不思議な出来事を思い返し、
やはり、あの日、
あなたのお父さんが、助けてくれたのではないかと考えました。


あなたの残された時間を変える事が出来ない代わりに、
私の苦しさを取り除いてくれたんだと。

 


そちらで、お父さんには、逢えましたか?


助けてくれて、ありがとうございましたと、
伝えてくれたらと思います。