拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

最後の家族写真

 あなたへ


最後の家族写真を撮った日のことを覚えていますか?


あれは、あなたがそちら側へ旅立つ11ヶ月程、前のことでしたね。


あの子のリクエストで、
遠方まで、遊びに行くことになった私たち。
仕事が忙しい最中、あなたは、予定を調整し、休みを取ってくれました。


随分と前から計画を立てて、
指折り数えなら、その日を、とても楽しみにしていましたね。


出掛ける前日に、テレビで確認した天気予報は、台風。


目的地は室内だから、
どんな天気でも、延期せずに、行こう
すぐに別な日を休めるか、分からないからと、
台風の予報を聞きながら、あなたは、言ったのでした。


あの日は、予報通りの天気でしたが、
予定通り、家族3人、電車に乗って、出掛けましたね。


いつも、車での外出だった私たち。
電車で出掛けてみようと提案した私に、
あなたとあの子は、大賛成してくれましたっけ。


初めて、家族3人で電車に乗った日は、
叩きつけるような雨だったけれど、
窓から眺める雨も、
早朝の、空いている車内も、
全部が楽しい旅の始まりに見えましたね。


目的地付近の駅に着くと、酷い雨と風。


そこから徒歩20分の場所にある目的地へは、歩いて行く予定でしたが、
急遽、タクシーでの移動に変えたのでした。
思えば、家族3人で、タクシーに乗ったのも、あの日が、初めてでした。


無事に目的地へ辿り着き、
目をキラキラさせて、施設内を楽しむあの子の笑顔に、
あなたと2人、
天候は悪かったけれど、来てよかったねと、話しましたね。


楽しい時間を過ごしながら、
それぞれがカメラマンになった私たちは、
あなたとあの子
あの子と私
あなたと私
たくさんの笑顔を、カメラに収めていきました。


そして、


写真、撮りましょうか
そう声を掛けて下さった施設の方にお願いした、1枚の家族3人の写真。


ぬいぐるみを頭に乗せて、満面の笑みを浮かべながら、
これで撮ってください なんて、あの子の姿は、
他の観光客の方から、笑われてしまいましたね。


まだ、家族の中で一番、身長が小さかったあの子を真ん中に、
3人とも、とてもいい顔で撮れた家族写真。


あの日の写真は、
家族3人で撮った、最後の写真になりました。


施設内を存分に楽しみ、
外に出ると、酷い雨風は、嘘だったかのように、
静かな空が広がっていました。


せっかくだから、駅まで歩こう


徒歩20分の距離を、ゆっくりと、楽しみながら、歩きましたね。


あの時、
3人で見た景色
途中で食べた、ハンバーガーの味
家族3人の笑い声
今でも、よく覚えています。

 


あれから、11ヶ月程が経ち、あなたが息を引き取った日。
私たちは、あなたの遺影の写真を選ばなくては、なりませんでした。


あの子とふたり、泣きながら一緒に選んだ写真は、
あの日、家族3人で撮った写真でした。


ずっと、3人一緒だよ


あの子と私から、あなたへのメッセージを込めて、
この写真を、あなたの遺影に選びました。


あの日の家族写真は、
毎年、新しいものをプリントアウトして、
手帳に挟んで、持ち歩いています。


先日、来年用の手帳に挟む分の写真を印刷しました。


この写真を見ているとね、
とても、幸せな気持ちになります。


あなたが何処にいても、ずっと、私たちは3人家族。

 

OFUSEで応援を送る