拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

最後の言葉

あなたへ


人が涙を流す時に
右目から最初に出た涙は、嬉しいから
左目から最初に出た涙は、悲しいから


偶然、こんな言葉を目にしました。


この言葉を読んで、私は、
決して忘れることの出来ない、
あの日の、あなたの涙を想いました。


容態が急変し、話すことも、その瞳を開くこともできなくなったあなた。


医師から、
体を休めるために、薬で眠っている状態と説明されてから、
どれくらいが経った頃だったでしょうか。


あなたの家族、あの子と私。


みんなであなたの側に行くと、
意識がないはずのあなたが、一粒の涙を流した日がありました。


たくさんの管を通された体で、
懸命に生きながら、
左目から流した一粒の涙で、私たちに訴えた最後の言葉は、
悲しい だったのでしょうか。


もっと、たくさん、生きたかったものね。


退院したら、またあの子と一緒に、自転車に乗って、出掛けたいと、
新しい自転車を買う予定だって立てていたもの。


今度は、黄色の自転車にしようかな って、
一般病院でのあなたの言葉に、
あの子も、私も、賛成でしたね。


黄色の自転車、可愛いよね


そんな他愛ない会話をしながら、
あなたは、新しい目標に、嬉しそうにしていました。


そう?じゃぁ、やっぱり、黄色の自転車にしようかな って、
ほんの少し前まで、笑顔を見せてくれていたあなた。


悔しかったね。


私も、悔しかった。


声が聞こえなくてもね、
ちゃんと、あなたの言葉、届いたよ。


うん


悲しかったね


もっと、生きたかったよね


私も、あの子も、みんな悲しかった。


あなたの手を握り、頑張れ、頑張れって、励ましながら、
本当はね、
悲しかった。


誰も、胸のうちを口にはしなかったけれど、
ただ、ただ、その命が続きますようにと、願っていたよ。


どうして、こんなことになってしまったんだろう。


どうして、あなたなんだろうって、
ただ、泣くしかなかった。


誰も、どうすることも出来なくて、ただ、みんなで悲しかったね。


どうしても、助けたかったのに、
何もしてあげることが出来なくて、ごめんね。


左目から流した一粒の涙。
それは、あなたの声だったね。


あなたの最後の言葉。
絶対に、忘れないよ。