拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

ゴースト

あなたへ


テレビが好きだったあなた。
特に、映画が好きで、テレビで放送される映画の全てを録画しては、
空いた時間を見つけて、視聴していましたね。


この映画は、削除。
この映画は、保護。
そんなふうに、特にお気に入りの映画は、保護にしていたあなた。


このレコーダーを買って、
あなたが初めて保護した映画を覚えていますか。


古い順に並べると、いちばん始めに出てくる映画は、
ゴースト もういちど抱きしめたい。


これは、洋画よりも、邦画を好む私のために保護しておいてくれた映画でした。


ゴーストって映画、知ってる?


内容はなんとなく知ってるけれど、ちゃんと観たことはないかな


これはね、リメイクされたもので、邦画だよ
絶対に見た方がいいよ


あの時、あなたから、とても強く勧められたんでした。


分かった
後でね


目まぐるしい日常。
次から次へと新しく始まるテレビ番組。


限られた時間の中で、
あなたが勧めてくれた映画を一度も見ることはなく、
いつかあなたに答えた


後でね


の日が来ないまま、
あれから、何年が経ってしまったのでしょうか。


録画の整理をしながら、
時々、目についた、いちばん古い、保護マークの付いた映画。


あなたを見送り、私は、その映画を再生する日は、
きっと、永遠に来ないだろうと思っていました。


それなのに、先日の私は、


もしも、辛くなったら、途中で止めてもいいからさ


なんて、独り言を言いながら、
何故だか分かりませんが、再生ボタンを押さずにはいられませんでした。


大体のストーリーは、知っているつもりでしたが、
記憶とは違っていた内容に、
引き込まれるように、画面を見つめながら、
私は、あなたとの時間を重ね合わせていました。


あなたと出会った日のこと


あなたとたくさん笑ったこと


あなたがプロポーズしてくれた日のこと

 


そして、
あなたが息を引き取った日のこと

 


そうして、ストーリーが終盤に差し掛かると、
上手くは言えませんが、
あなたの、強い想いのようなものに、包まれた気がしました。


大粒の涙を流しながら、私は、
確かに、あなたの温かさを感じていました。


あの日、あの映画のように、
あなたは側にいて、
伝えようとしてくれていたのでしょうか。


「笑っていて」


あの日感じたこの想いは、
最後に伝えたかった、あなたの想いだったのでしょうか。