拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

かけがえのないひととき

あなたへ


コーヒーがいい


これは、夢の中で、あなたに言われた言葉です。


あの夢を見たのは、あなたの告別式の、前日の夜でした。


家には、あなたがいて、あの子がいて、家族3人のいつもの風景。
いつもの席に、あなたが来たところで、私は、聞いたんでした。
お茶でいい?って。
そんな私の言葉に、
コーヒーがいい
そう、あなたの返事が聞こえたところで、目が覚めました。


告別式を控えていた私。
あの頃は、連日の打ち合わせで、
当日の持ち物についての説明がされていた頃でした。


コップと、湯呑みを持って来て下さいね
コップには、水を入れます
湯呑みは、生前、ご本人が使っていたものを持って来て下さい
会場で、お茶を淹れて、お供えします


そんな説明がありましたが、
コーヒーを好んでいたあなたの愛用品は、湯呑みではなく、マグカップでした。


マグカップでもいいですかって、確認をしながら、
あの時の私は、
亡くなった人へは、お茶をお供えするものなんだと思いました。
これからは、あなたに、毎日、お茶を淹れるんだと。


夢から覚めた私は、
あれは、あなたの言葉なんだと思いました。


お茶を淹れてお供えしなくてはいけないと思い込んでいた私に、
俺は、コーヒーがいいと、伝えてくれたんだと。


あなたにコーヒーをお供えしながら、
時々、あの時の夢のことを考えます。


あなたは、あの頃と変わらずにいられる、
かけがえのないひとときを、私に遺してくれました。


あなたを見送り、私の日常は、大きく変わったけれど、
あなたのために、
あなた好みのコーヒーを淹れる時間だけは、

あの頃のまま、変わらずに、ここにあります。


砂糖が少ないと、
愛情が足りない なんて、騒いでいたあなた。


砂糖を多めに入れたコーヒーを、あなたにお供えしながら、
いつでも、願っています。


この愛情が、あなたのところまで届きますようにと。