拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

歯医者

あなたへ


あなたが体調を崩した頃、
歯の治療に通っていた私は、あの頃に、予約をキャンセルして以来、
ずっと、歯医者へ行くことが出来ずにいました。


それはやはり、
そこにも、あなたとの何気ない日常があったからでした。


家族3人、みんなでお世話になった歯医者。


あなたと私は、同じ時間に予約を取ることはなかったけれど、
私の治療中、先生とのやり取りの中、
あなたの話も出ていました。


ご主人、お忙しそうで、なかなか来られないみたいですね
いつでも待っていますから、そうお伝えくださいね


そんなふうに、忙しいあなたを心配してくださった先生との会話。


あなたを見送り、
もしも、あなたのことを何か聞かれたらと思うと、
落ち着いて、答える自信がなかった私は、
歯医者へ行く勇気が出ないまま、治療が途中で止まっていました。


きっと、あなたなら、
早く行って来なよ
なんて、笑うのでしょうが、
私にとって、あなたを見送ったことを、口に出すことは、
とても、苦しいことでした。


歯の治療が、途中になっていることが、ずっと気掛かりだった私。


通院先を変えることも考えましたが、あまり気が進まなかったのは、
あなたが勧めてくれた歯医者だったからでした。


治療に行かなくてはと思いながら、
随分と時間は掛かりましたが、
先日、勇気を出して、歯医者へ行きました。


病院内へ入ると、内装が変わり、
レントゲンの機械も、新しいものへと変わっていました。


あなたを見送り、私の中の時間は、ゆっくりと、
そして時々、止まったままに感じていましたが、
やはり、時間は、正確に流れているんだと思いました。


あなたを見送り、
出来なくなったことや、
行けなくなった場所は、たくさんありましたが、
またひとつ、勇気を持って、
小さな一歩を踏み出すことが出来ました。