拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

反抗期おわりの宣言

あなたへ


近頃、あの子との外出をする機会が増えた私は、
あの子の大きな成長を感じました。


あの出来事は、あなたを見送り、
1年と半年程が経った頃のことでした。


それまでは、車での外出の時には、
当たり前のように、助手席に乗っていたあの子ですが、
その日は、突然に訪れました。


助手席は嫌だ
僕は、今日から、後部座席に乗るよ と。


突然のあの子の言葉に、少しショックを受けながらも、
これも成長のひとつなんだと思いました。


一緒に出掛けることが嫌なんじゃなくて、
助手席に座っているところを、友達に見られたくない
友達がいそうな場所で、一緒に歩くのも嫌だからね
友達も、みんな後部座席に乗っているんだよ


あの日のあの子は、そんな話をしてくれたんでした。


あれから、一緒に出掛ける時には、決まって、あの子は後部座席へ。
小さな頃から、よく喋るあの子は、大きくなっても、変わりませんでしたが、
そんなふうに、反抗期を思わせる成長を見せてくれたんでした。


そんな日々が続き、あの子の高校受験の日に、
車で会場まで送っていくと、駐車場で見かけたのは、
あの子と同じように、後部座席に座る、他の受験生たちでした。


中には、子供は後部座席に乗せるご家庭もあったと思いますが、
それにしても、助手席は、空席のまま、
私が見かけたほぼ全員の受験生が、後部座席へ。


そんな他の子の姿を確認しながら、あの子は、言ったんでした。


ほらね?みんな助手席には、座らないんだよ
だって、親の隣に座るのは、恥ずかしいよ と。


あれからも、相変わらず、一緒に出掛ける時には、後部座席に座っていたあの子。
空いた助手席も、
後ろから聞こえるあの子の声も、
正直に言うと、ちょっぴり寂しかったけれど、
同時に、あの子も、他の子と同じように成長しているんだと感じました。


そうして、あの子が高校生になると、生活が変わり、
あの子と一緒に出掛ける機会は、自然と減っていきました。

 


ここ数月程、あの子の用事で、一緒に出掛ける機会が、とても増えました。
いつの間にか、
何事もなかったかのように、また助手席へ座るようになっていたあの子。


先日、助手席に座り、シートベルトを締めながら、


一時期、俺、後部座席に座ってたよね
あの頃は、何だったんだろう
あれは、反抗期だよね
じゃぁ、反抗期、終わりました


なんて、あの子から、突然の反抗期おわりの宣言がありました。


あなたを見送り、前向きな気持ちになれず、
笑い方すら、忘れてしまったあの夏。


ただ、息をして、
ただ、生きているだけだった私が、


全部見てから、そっちに逝くね
あの子が、どんなことで悩んで
どんなふうに、成長して
どんな道を選ぶのか
どんな大人になるのか
あなたの分まで、全部、見てからにするよ
だから、当分、そっちには、逝けそうにないよ


ひとりで泣きながら、
あなたに、そう報告したのは、
あの子の小さな成長を見つけた頃でしたね。


あなたが見ることのできなかった、あの子の第二次反抗期。


まさか、
あの子自身から、反抗期が終わったことを、発表されるとは思いませんでした。


いつでも、想像とは違うかたちで成長を見せてくれるあの子。
これから先も、きっと、想像もしていなかったようなかたちで、
成長していく姿を見せてくれるのでしょう。


そんなあの子の姿。
あなたの分まで、ちゃんと、覚えておくからね。

  

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