拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

あなたと過ごしたかった場所

あなたへ


先日、急に思い立って、ひとりで散歩に出掛けてからというもの、
時々、ひとりで散歩に出掛けるようになりました。

 


あれは、あの子が間も無く中学校へ上がる頃のことでした。


あの子に、手が掛からなくなったら、
夫婦でどんな時間を過ごすの?


そんなことを聞かれたことがありました。


あの時の私は、


あの子が、私たちと過ごすより、
友達との時間を選ぶようになったら、
あなたとふたり、
恋人の頃みたいに、2人の時間を大切にしたい


そんなふうに答えたんでした。


そんな会話から数ヶ月後、
あなたは、此処から旅立ち、
あの子と2人、協力しながら、
寄り添うように生きてきましたが、
あの子は、徐々に、家にいるよりも、友達との時間を優先するようになりました。


嬉しそうに出掛けるあの子を玄関先で見送りながら、
あの頃、楽しみにしていた、
あなたと過ごす筈だった時期が、やって来たんだと思いました。


あなたと2人で過ごす時間が出来たら、
ゆっくりと散歩をしてみたい。


これは、あの頃の私の夢のひとつでした。


今までの私は、
ひとりで公園に出掛けるなんて、考えられないことでしたが、
何故だか、あの日、ひとりで散歩に出て以来、
あなたと行きたかった場所へ散歩に出掛けるようになりました。


もしも今、
あなたとふたりで時間を過ごすことが出来たのなら、
私たちは、どんな時間を過ごしていたでしょうか。


たまには、散歩しない?
そんな私の言葉に、あなたはきっと、


外は暑いから嫌だよ
なんて、言いながらも、
夕方なら、行ってもいいよって、言ってくれるのでしょう。


暑さが和らぐ夕方の、心地の良い風が吹く公園で、
私たちは、どんな時間を過ごすことが出来たのでしょうか。


きっと、いつかみたいに、何故か敬語で、
たまには、手でも繋ぎますか?って、
あなたは、私の大好きなその手を、
こちらに差し出してくれるのでしょう。


いつでも、私の歩調に合わせてくれたあなた。


きっと、ふたりでゆっくりと歩きながら、
色々な話をしたのでしょう。


あの子が小さかった頃の話や、
私たちが出会った頃の話。


出会ったばかりの頃に戻ったみたいだねって言ったら、
あなたは、なんて言ってくれたのかな。


あなたの大きな手に包まれながら、
どんなに素敵な時間を過ごすことが出来たでしょうか。


あなたと過ごしたかった場所での時間は、
あの頃のあなたに逢える気がして、
今日もまた、公園のベンチに座り、暫くの時間を過ごしました。


夕方の公園で、空を見上げながら、
あなたと過ごす筈だった時間を想い、
あなたのその大きな手に、
もう一度だけ、触れたくなりました。

  

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