拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

目に見えない財産

あなたへ


何でも話せる家族になろう


あなたが、
こんなふうに言ってくれた日のことを、覚えていますか?


あれは、私たちの結婚が、決まったばかりの頃のことでした。
これからのことや、
どんな家族になりたいか、
あなたの想いを、たくさん聞かせてくれたことがありましたね。


その中のひとつ。


何でも話せる家族になろう


こんな言葉がありました。


どんなに小さなことでも、話し合おうね
あなたは、そう言って笑ったんでした。


その言葉の通り、私たちは、何でも話し合いましたね。


楽しかったこと
面白かったこと


新しい発見をしたこと
ちょっと困ったこと


時々には、愚痴もあったけれど、
嫌なことは笑いに変えて、あなたと一緒に吹き飛ばしました。


何も話したくないくらいに落ち込んで帰った日には、
何かあったでしょ?聞かせて
って、あなたは、黙って、私の話を聞いてくれたんでした。


あの時は、何も話せないくらいに、落ち込んで帰ったはずだったのに、
あなたに話しながら、
言葉にしてみたら、大したことじゃなかった なんて、
元気を取り戻して笑った私に言ってくれましたね。


黙って抱え込むと、
小さなことが重大なことのように感じることもあるんだよ と。


あの日、あなたが言ってくれた言葉の通り、何でも話してきたあなたと私。


やがて、あの子が生まれ、成長し、
そこには、あの子も加わった、
何でも話せる家族3人のかたちがありました。


ずっと続くと思っていた、
当たり前だった、私たち3人の家族のかたち。

 


あの夏、あなたを見送り、
あの子と2人だけになった我が家。


現在も、あの頃のまま、
何でも話せる家族のかたちがここにあります。


大きくなったあの子とは、
一緒に過ごす時間が、随分と少なくなりましたが、
朝の時間や、夜、寝るまでの短い時間の中に、
あの子との会話が凝縮されているように思います。


その日の出来事や、友達との話。
笑ってしまう話。
そして時には、真面目な話。


話し込み過ぎて、寝る時間が遅くなることもしばしば。


え?もうこんな時間?って、慌てて布団に入りながら、
あの子との会話を反芻し、
あの子の成長や、新しい発見に、喜びを感じながら、目を閉じる夜は、
心地のいい眠りに就くことができます。


何でも話し合える家族のかたち。


あなたと一緒に作ってきたこのかたちは、
あなたが此処にいなくても、ちゃんと遺っています。


あの頃と変わらない我が家のこのかたちは、
あなたが遺してくれた
「目に見えない財産」


あの子とお喋りをしながら、ふと、そんなことを考えました。