拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

私が知らない私

あなたへ


白が似合うよ


あなたと出会い、どのくらいが経った頃だったでしょうか。
私を連れてお店に入ったかと思えば、
突然に、白のジャケットをプレゼントしてくれたあなた。


あれは、あなたが初めて、私に選んでくれた服でした。


先日、箪笥の中を整理しながら、
小さく畳んだ、あの時の服を見つけました。


掃除の手を止め、鏡の前で合わせながら、
あの頃のあなたのことを思い出していました。


あの頃、黒い服ばかりを好んで着ていた私にとって、
白は一番避けていた色でした。
きっと、私には似合わない と。


え?白なんて似合わないよ


そんなことないよ
こっちに来て


そう言って、私を鏡の前に立たせ、
あなたが選んでくれた白のジャケットを合わせながら、
あなたは言ったんでした。


ほらね?絶対、白が似合うよ って。


鏡の向こう側。
私が知らない私が、こちらを見ているような、
不思議な気持ちで、自分の姿を見つめたんでした。


初めての白いジャケット。


なんだか、ちょっと恥ずかしかったけれど、
あなたが、何度も似合うって言ってくれたから、嬉しかった。


あれからの私は、
あなたがプレゼントしてくれた、あのジャケットを着ると、
特別になれる気がして、
あの服ばかりを選んで着るようになったんでした。


お気に入りだったあのジャケット。


いつの間にか、所々が綻んで、
もう、着ることはありませんでしたが、
それでも、大切な思い出として、箪笥の隅へ仕舞い込んでいたものでした。


あの日、不要になった服を処分した私は、
あの白いジャケットを、一番、目につく場所へ仕舞いました。


見ているだけで、
ワクワクとした気持ちになれる、あなたの魔法が掛かった白いジャケット。


あなたが初めて私の服を選んでくれたあの日から、
私の服の好みは、徐々に変わり、
あなたが似合うと言ってくれた白を取り入れるようになったんでした。


私が知らない私を、見つけてくれるのが上手だったあなた。


あなたと出会わなかったら、きっと、
多くの私が、隠れたままになっていたのでしょう。


たくさんの私をみつけてくれて、ありがとう。