拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

小さな試練

あなたへ


よりにもよって、あの子が不在の時に、
それは現れました。


いつも通り、帰宅後に、あなたに御線香をあげ、
立ち上がった私の目の端に、黒っぽい物体が映り込みました。


恐る恐る視線を移すと、
嫌な予感は的中し、何処から入って来たのか、
そこには、コオロギがいました。


虫が大の苦手な私。


あなたと結婚し、ひとりで虫と戦ったのは、
あの子がまだ、幼かった頃。


あなたが留守の間に、家の中に飛んで来たGと、
2時間、ひとりで戦い続けたんでした。


思えば、家の中に虫が迷い込んで来る時は、
決まって、あなたとあの子が側にいてくれたから、
長い間、虫退治とは、縁がありませんでした。


どうしよう


怯えながら、
ティッシュペーパーを片手に、右往左往しながら、
何故か、何度もあなたの名前を呼んでしまった私。


Gよりは、まだコオロギの方が・・・


そう自分に言い聞かせながら、
コオロギと戦った30分間。


最後には、半泣きしながら、戦いを終えた私ですが、
そんな私の姿を、
何処かで見物しながら、あなたは笑いを堪えていたのでしょうか。


日常の小さな困ったこと。
私には、まだまだ、
克服しなければならないことがあるようです。


虫退治。
小さな試練でしたが、
ひとりで戦い抜くことができた私は、
また少し、逞しくなれたでしょうか。