拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

眠る時間

あなたへ


すっかり体調が良くなった私は今、
やりたいことがたくさんあります。


ずっと、気になっていた場所へ行ってみたい
もっと、たくさんの音楽を聴きたい
もっと、たくさんの本を読みたい


そして、
色々なものを作りたい


先月、急に思い立って手芸をした私は、
あの日から、時間を見つけては、
また、ものを作ることを始めました。


あなたが側にいてくれた頃は、いつでもこんなふうに、
好きなことに囲まれて、過ごしていたんでした。


「もっと時間が欲しい」
これは、あの頃の私の願望でした。


どうして眠くなるんだろう
寝る時間って無駄だよね
眠らない体があればいいのに


いつか、そんな話をした私に、あなたは、言いましたね。


もしも、眠らなかったら、
その代わりに、きっと、寿命は半分だね って。


もしも、私たちが眠らない生き物であったのなら、
夜中に目が覚めて、
あなたとあの子が、幸せそうに眠る顔を見ることは、
なかったのでしょう。


朝、目が覚めて、当たり前に聞こえる、
あなたのおはようの声を聞くこともなかったのでしょう。


そして、夢を見るということも知らないままに、
今の私は、あなたのことを、
今よりも、もっと遠くに感じたのかも知れません。


眠る前に、あなたのことを考える時間も、
あなたと過ごした夢から目が覚めて、
もう一度、あなたに逢えるかも知れないと、
再び、目を閉じる瞬間も、なかったのでしょう。


今の私が、ここにあるのは、
あの頃の私が、無駄だと感じていた、
眠る時間があったからこそだったんだと思います。


いつかの私の、あの言葉は、やっぱり取り消しておきます。
眠る時間は、決して無駄なんかではありませんでした。


だって、
あなたと過ごした日々、小さな幸せの瞬間を見つけることも、
遠く離れているはずの、あなたに会える場所を見つけることも、
出来たのですから。


寿命が半分じゃなくて良かった。


もしも、寿命が半分であったのなら、
あなたと過ごす時間までもが、半分になっていたところでした。


あの頃、どうでもいいと思っていた、1日のうちの数時間の中にも、
当たり前で、掛け替えのない瞬間が、隠れていたんですね。


今、私には、やりたいことがたくさんあります。
それでも、眠る時間が勿体無いとは思わなくなった今の私。


あなたと出会い、過ごした日々が、
無駄な時間など、ひとつもない
急ぎ足で進もうとする私に、そう教えてくれました。


ゆっくりと、素敵なものを見つけるために、
眠る時間があるのかも知れませんね。