拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

最後の温もり

あなたへ

 

悲しくなってしまうのに、

不意に思い出してしまう最期の日。

 

一度、あの日の記憶の扉を開けてしまえば、

封印する間も無く、

一気に溢れ出すように、あの日のことを鮮明に思い出してしまうのは、

そこに、絶対に忘れないと誓った、

あなたのその手の温もりがあるからなのかも知れません。

 

その手の最後の温もりは、

浮腫んで、パンパンになってしまったけれど、

温かくて、大きくて、

私が大好きな、あなたの手。

 

もう、この手を握り返してはくれなかったその手を握り締めながら、

あの日、

絶対に忘れない

そう誓って、その温もりを、

この心に、この体に、焼き付けたんでした。

 

あなたと手を繋いだ思い出は、たくさんあるはずなのに、

いつも鮮明なその温もりを思い出すのが、

あの日の最後の温もりであるのは、

絶対に忘れないと、

強く、強く誓ったからなのでしょうか。

 

これまでに生きてきた中で、一番泣いた日。

その記憶の最後は、

いつでも、私にその温かさを思い出させてくれる。

 

あの日のあなたの温もりが、

今の私を、こうして包み込んでくれるように、

あの日の私の温もりが、

今のあなたを、包み込んでくれていたらいい。

 

遠く離れてしまった、あなたと私。

 

別々の場所で、

あの日の、同じ温もりを思い出すことができたのなら、

私たちはきっと、

ほんの少しだけ、寂しくなくなるような気がします。

 

目を閉じて、

あの日、感じたあなたのその手の温もりを思い出していました。

 

あの時感じた温度は、

私たち2人だけの最後の温度だったね。

 

あなたの手は、とても温かくて、

もう一度だけ、この手を握り返してくれるんじゃないかなって、

本当は、待っていたんだよ。

 

出来ることなら、

ずっと、ずっと、待っていたかった。

 

今、あなたの手に、この手の温もりは残っていますか。

 

あなたは、覚えていますか。

あの日の、私たち2人だけの温度を。