拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

乗り移る

あなたへ

 

乗り移るってあると思う?

霊と呼ばれる存在が、誰かに乗り移って、

例えば、話をしたり、

何かをするとか、

そんなことってあるのかな

 

先日のあの子の言葉に、

 

きっと、あると思うよ

 

私は、即答しながら、あなたを見送ってから度々起こった、

不思議な出来事を思い出していました。

 

あれは、あなたを見送り、あなたの遺品を整理していた時のこと。

 

初めて見た、使い方が分からない工具を触った私に、

あの子が、

 

これは危ないよ

両手で、しっかり持ってて

 

突然、そんなことを言い出しました。

 

コンセントにプラグを差し、電源を入れる機械。

不思議に思いながら、あの子に言われた通り、

しっかりと両手で持つと、あの子が電源を入れてくれました。

 

凄い振動と、音を確認したところで、電源を切り、

 

本当だね

でも、どうして分かったの?

 

そんな私の言葉に、あの子は、

分からないけれど、凄い振動と音が、

突然、頭の中に浮かんだと話してくれました。

 

不自然な場所へ、隠すように仕舞ってあったあの機械は、

後に、金属などを切断するために使うものだということが分かりました。

 

とても危険なものだから、誰の目にも付かないよう、

あの場所へ、仕舞っておいてくれたんですね。

 

そして、家に電動ノコギリがあることが分かった日のことも、

忘れることが出来ません。

 

引っ越し準備の為に、解体した棚の木材を、あの子と一緒に、

ノコギリで、切っていた時のことでした。

 

電動ノコギリがあるから、使ってもいい?

 

突然、そんなことを言い出したあの子。

 

あなたが家で、電動ノコギリを使った姿は一度も見たことがなかったことから、

家には、そんなものはないよと返した私に、

あの箱に入っているんだと、断言したあの子。

 

そうして、あの子が指差した箱の中から、

電動ノコギリを取り出したあの子は、

 

ほらね

あったでしょ?

 

なんて、得意げに持って来たんでした。

 

あなたの仕事道具を、触ったことがなかったあの子が、

何故、そこに仕舞ってあるのことが分かったのか。

 

自分でも分からないけれど、でも知っていた

あの日、あの子は、そんな話をしてくれたんでした。

 

そして、

 

危ないから、お母さんは、離れてて

 

そう言いながら、初めから、使い方を知っていたかのように、

木材を切り始めたあの子の姿を見つめながら、

私は、更に、驚いていたんでした。

 

不思議なのは、充分に驚くことに値する出来事であったのに、

何故だかあの子は、

あなたの工具が危険だと教えてくれたことも、

電動ノコギリが家にあると言ったことも、

覚えていないということでした。

 

他にも、不思議な出来事の数々を思い返しながら、

あの子の言う、乗り移るというような現象は、

きっと、あるのだろうと考えていました。

 

今、思えば、当時、まだ中学1年生だったあの子が、

あたかもその工具を知っているかのような振る舞いは、

なんだか、不自然だったようにも感じます。

 

本当は、あれは、あなただったのではないでしょうか。

 

これまでのことを思い返してみると、

あの子が言う、乗り移るという現象は、

実は、私たちは、既に経験済みなのかも知れませんね。

 

よって、乗り移るという現象は、ある。

 

ねぇ、あなた。

これは正解ですか?