拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

水筒

あなたへ

 

仕事用の水筒を眺めながら、ふと、

 

古くなってきたから、買い換えようか

 

そんなことを考えた私は、

この水筒を買った日のことを思い出していました。

 

あれは、いつ頃のことだったでしょうか。

家族3人で、買い物へ出掛けた日。

 

水筒、買い換えたいな

 

なんて私の言葉に、

あなたがこの水筒を選んでくれたこと、今でも、よく覚えています。

 

これ、いいと思うよ

 

そう言って、あなたが指差した水筒は、

私ひとりで買いに出掛けたのなら、絶対に選ばないデザインのものでした。

 

あなたがいいと思うと言えば、

なんだか、それが良く見えてくる。

 

あの時、私は、何も迷うことなく、

あなたが選んでくれた水筒に決めたんでした。

 

思えば、あの頃の私の周りには、そんなふうに、

あなたが好むものと、

私が好むものが、当たり前に混在し、

それらを日常として、

何も考えずに、過ごしてきました。

 

あなたが選んでくれたもの全てに、

その時のあなたの想いが込められている。

 

そんなことに気が付くことが出来たのは、

あなたを見送ってからのことでした。

 

あなたを見送り、これまでに、

いくつかのものを買い換えてきた私ですが、

古くなった水筒を手に取り、眺めながら、

ふと、考えてしまいました。

 

これから先、ずっと、

自分のものは、自分で選ばなければならないんだと。

 

それは、とても当たり前で、誰もが当然のことであるはずなのに、

ほんの少しだけ、胸の奥が苦しくなるのは、何故でしょうか。

 

あなたの想いが側にあるという、当たり前だった日々。

 

あの頃から、ずっと、

いつも仕事へ行く時には、持ち歩いていた水筒を、手に取りながら、

あの日、あなたがこの水筒を選んでくれた日のことを、

鮮明に思い出していました。

 

そっか。

こんなところにも、あなたの想いが遺されていたんだね。

 

もう少しの間だけ、

この水筒を使おうか

 

古くなった水筒ですが、

もう少しだけ、このままで、

 

当たり前に、あなたの想いが此処にある

 

そんな日々を過ごそうと思いました。