拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

出会うべく人

あなたへ

 

あの高校へ行ったこと、後悔してる

 

あの子が、初めてそんな言葉を口にしたのは、

高校1年生の頃のことでした。

 

友達と過ごす時間は楽しいけれど

勉強する意味が分からない

 

これは、その頃から、度々、あの子が口にした言葉。

 

高校へ入学し、少しずつ、夢見ていた将来への道とは、

別な道へと定まってきたあの子は、

専門的な勉強ができる学校を選ばなかったことに、

後悔しているようでした。

 

後悔はしているけれど、高校を辞めるつもりはない

という言葉から、

高校を辞めたい

という言葉に変わっていったのは、いつ頃からだったでしょうか。

 

学校は、勉強をする場所ではあるけれど、

友達との時間や、

穏やかで、何気ない日々を大切にしてほしい

きっと、今通う高校へ行った意味が見つかるはずだよ

 

そんな私の言葉は、

より早くに、専門的な勉強を始めたいと考えるようになったあの子の耳を素通りし、

心の奥へ、届くことはありませんでした。

 

ごめんね

 

そんな言葉を口にするあの子と、その度に話し合い、

一旦は、前向きな言葉を聞けるものの、

その考えは、暫くの後に、振り出しへと戻り、

学校を辞めたいという心の奥底に仕舞われたあの子の気持ちは、

変わることがないまま、高校2年を終えたのでした。

 

中学生までは、学校が大好きで、

少々、体調が悪くても、学校を休まなかったあの子が、

こんなふうに、学校を辞めたいと言う日が来るだなんて、

考えてもいませんでした。

 

義務教育を終え、

人生を選ぶことが出来るようになったあの子。

 

もし出来れば、何事もなく、無事に高校を卒業してくれればと思いながらも、

あの時、高校を辞めなくて良かったという未来があるように、

あの時、高校を辞めて良かったという未来もあるのではないかと、

あの子にとって、何が幸せなのか、

迷走する日々が続きました。

 

そんなふうにして迎えた、高校3年生への進級。

 

やはり、出来ることなら、

無事に卒業まで、頑張ってくれたらと、

あの頃の私は、祈るような気持ちで、4月を迎えたのでした。

 

学校、辞めなくて良かったよ

 

先日、突然に、

あの子の口から、初めてそんな言葉を聞くことが出来ました。

 

それは、ある友達との小さなキッカケからでした。

 

高校で出来た友達は、我が家が母子家庭であることを知りません。

特に話す機会がないまま、2年間を過ごしたあの子ですが、

小さなキッカケから、

ある友達と、自分の家族についての話になったようでした。

 

初めて家族の話をしてみると、

お互いに、同じ年頃に父親を亡くしていたことが分かったそう。

 

高校へ入学当初より、仲良くしていた友達ですが、

先日、初めて、深い話をすることが出来、

その仲は、それまで以上に、急速に深まったようでした。

 

お互いに、

こんな話ができる友達は初めてだよと、

たくさんの話をした2人は、

何故か、将来、進みたい道までもが、とても似ていました。

 

あなたという人を亡くした気持ちは同じでも、

父親を亡くしたあの子の気持ちと、

配偶者を亡くした私の気持ちは、

全くの別物なのだろう。

私はきっと、あの子の気持ちは、分かってあげられない。

 

そんなふうに感じるようになったのは、

いつ頃からだっただろう。

 

今通っている高校へ進学したからこそ、

あの子に出来た、同じ痛みを知る友達。

 

きっと、あの子にとって、出会うべくして、

出会った友達だったのでしょう。

 

学校、辞めなくて良かった

あの高校へ行って、良かったよ

 

高校へ入学してから、初めてそんな言葉を聞くことが出来た私は、

なんだか、涙が溢れそうでした。

 

高校へ進学してからは、前を向いたり、後ろを向いたりと、

忙しないあの子でしたが、

漸く、あなたに、

本当に、いい報告をすることが出来ました。

 

あの子に、またひとり、

とても素敵な友達が出来ましたよ。

 

俺はきっと、あの友達と出会うために、

今の高校へ行ったんだと、話してくれたあの子は、

なんだかとても、強くなったように見えました。

 

 

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