拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

贅沢な時間

あなたへ

 

あの子が幼かった頃のことを思い出していました。

 

思えば、あの頃の私は、

滅多に取ることの出来なかった自分だけの時間を、

とても贅沢な時間だと考えていました。

 

あの子とふたりで、留守番してるよ

 

そんなふうに、時々、あなたがくれた私だけの時間は、

夢のような時間に感じられたのでした。

 

あの子はとても可愛い。

日々成長するあの子との時間を幸せに感じながらも、

時々、何もかもが自由だった独身の頃を振り返ってみると、

その頃の自分が、キラキラと輝いて見えたのでした。

 

高校生活に慣れた頃から、

忙しなく動き回るようになったあの子。

 

アルバイト

武道のお稽古

友達との約束

 

あの子は家を空けることが多くなり、

あの頃、あんなに贅沢に感じていたひとりの時間が、

私の日常となりました。

 

贅沢に感じられた、ひとりの時間が増えた代わりに、

あの頃のように、あの子が常に側にいることが、

当たり前ではなくなった現在。

 

これまで過ごしてきた時間を振り返りながら、

私にとっての贅沢とは、何なのだろうかと考えていました。

 

独身で、何もかもが自由だったあの頃

 

時に、自分だけの時間が欲しいと思いながらも、

あなたと一緒に、

たくさん笑いながら子育てをしたあの頃

 

当たり前に、あなたが側にいてくれたあの頃

 

思い返してみれば、今の私にとって、

それらは、どれもが輝きに満ちた、とても贅沢な時間だったように思います。

 

そして、

あの子が成長し、

ひとりの時間を楽しむことが出来るようになった今。

 

あなたが此処にいないことにフォーカスしてしまえば、

途端に不幸な時間を生きる私が完成してしまうのでしょうが、

例えば、

 

あの子が、元気に、とてもいい子に育ってくれていること

 

一緒に過ごす時間は、随分と減ったけれど、

毎日、あの子とふたりで、笑うことが出来ること

 

健康に、毎日を過ごしながら、

自分の好きなことを、存分に楽しめるようになったこと

 

今、私の側にある小さな幸せを並べてみると、

これら、ひとつひとつもまた、

かけがえのない贅沢なのではないかという気がします。

 

だって、未来の私が、今を振り返った時に、

私が生きているこの瞬間も、きっと、

キラキラと輝いて見えるはずですから。

 

あなたが此処にいない寂しさや悲しみを、

帳消しにすることはできないけど、

少し、視点を変えて、私自身を見つめてみれば、

私のこの人生は、いつでも、

贅沢なものに囲まれているのかも知れません。

 

辞書を引けば、

贅沢とは、必要以上に、金やものを使うこと とありますが、

今の自分が幸せに感じるものが、すぐ側にある毎日こそが、

本当の贅沢なのかも知れませんね。

 

あなたはもう、此処にはいないけれど、

いつでも、あなたのその手の温もりを思い出すことが出来ることも、

存分に、あなたを想う時間があることも、

どんな遠く離れていても、想える相手がいることも、

少し、見方を変えてみれば、

それもまた、贅沢のひとつと呼べるのではないでしょうか。

 

だって、空の彼方、

きっと何処かにいるあなたのことを想いながら、

私の胸の奥は温かく、穏やかな気持ちになれるのですから。