拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

登山

あなたへ

 

登山家の方が撮った写真を目にした私は、

 

やはり、高いところから見る空と、

私がいつも見ている空は、違うんだな

 

なんて、まじまじと、写真を見つめながら、

ふと、私が最後に、山に登ったのは、

いつだっただろうかと考えていました。

 

小学生、中学生と、山に登った記憶を辿れば、

最後に待っていてくれたのは、あなたと過ごした記憶。

 

あれは、あの子が小学校に上がり、

最初のお正月のことでしたね。

 

年末から、あなたの実家に泊まっていた私たち。

 

大晦日の夜の談笑から、

皆で近くの山に登って、初日の出を見よう

そんな話になったのでした。

 

急に、登山なんて、絶対無理だよ なんて、怖気付いた私ですが、

 

登山じゃないから、大丈夫だよ

ただの散歩コース

 

そんなあなたの言葉に安心し、

年明けの薄暗い時間から、山へと出掛けたのでした。

 

皆で談笑しながら歩いた、なだらかな道。

 

きっとこのまま、

いつの間にか、頂上へと辿り着いているのだろう。

だって、散歩コースなのだから。

 

そんなことを考えていた私の気持ちが折れることになったのは、

歩き始めてから、どれくらいが経った頃だったでしょうか。

 

え?これ本当に、散歩コースなの?

 

ひとり、音を上げた私に、笑うあなた。

 

あなたの言う散歩コースと、私が想像する散歩コース。

随分と、掛け離れた険しい山道に、

私は何度、同じ言葉を発したでしょうか。

 

これ、登山だよね? って。

 

傾斜が急な上り坂では、あなたに手を引かれ、

大きな岩場を登る時には、後ろから押され、

漸く、頂上へ辿り着く頃に、丁度、日が昇り始めたのでした。

 

あの時に見た初日の出は、

折れ掛かっていた私の心を癒してくれるかのように思えました。

 

 

そうして、初めて山から見た日の出に、

あの子と一緒に大興奮で、

その美しい景色を、写真に収めたのでした。

 

今年も、いい年にしようね

 

皆でそんな話をする頃には、すっかり元気を取り戻し、

頂上を後にしたのでした。

 

自然に囲まれた場所で育ったあなたと、そうでない私。

 

その感覚の違いは、

今、思えば、笑ってしまう楽しい思い出です。

 

偶然目にした1枚の写真から思い出した、あの頃の記憶。

山から見た景色は、とても綺麗でしたね。

辛かったはずなのに、なんだか楽しかった。

 

山へ登った記憶と、

これまでの自分の人生を、無意識に重ね合わせながら、

ふと、山へ登ることと人生は、

なんだかとても、似ているような気がしました。