拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

カワセミ

あなたへ

 

あなたを見送り、気が付けば、

あまりテレビをつけることがなくなった我が家。

 

観たい番組は録画し、時間がある時に観る。

 

いつの間にかそのやり方は定着し、

ただ、テレビをつけておく時間は、

1日のうちに、朝の2時間程となりました。

 

最近のニュースや、天気など、

知りたいことは、インターネットを開けば、すぐに確認出来る。

 

気になることは、インターネットで検索すれば、

いくらでも、情報を得ることが出来る。

 

その方法は、最も効率の良い情報収集の仕方であり、

無駄がないと、そんなふうに考えていた私ですが、

 

それはちょっと、違っていたのかな

 

先日、そんなことを考えさせられた出来事がありました。

 

それは、先日、

あの子と一緒に、外出している時のことでした。

 

道路端に留まった二羽の鳥を指差しながら、

 

あれって、雀じゃないよね?

なんていう鳥だろう?

 

私のそんな言葉から、学校での出来事を話して聞かせてくれました。

 

あれ、カワセミじゃない?

こんなところに飛んでるなんて、珍しいよね

 

そんな友達の言葉に、

 

え?もうセミが飛んでるの?

 

なんて、返してしまったそうです。

 

どうやら、あの子は、カワセミを、

蝉だと思っていたようでした。

 

俺、カワセミって、セミだと思ってたよ

だってセミって付くから、川にいるセミだと思うじゃん

 

そんなあの子の言葉に、思わず、爆笑しながら、

あの子がカワセミを知らなかったことに、

それまで、気が付かなかった私は、ふと、考えました。

 

私は、いつ、カワセミを知ったのだろうかと。

 

私が育ったこの辺りでは、恐らく、カワセミはいません。

家族や友達と、カワセミについて語り合ったことなど、一度もないままに、

これまでを生きてきた私ですが、

カワセミは鳥であることを知っていました。

 

どこで覚えたのか、記憶がない記憶を辿りながら、

それは、テレビからの情報であったのではないかと、そんな気がしました。

 

なんとなく、テレビから聞こえる声を耳にしながら、

例え興味がなくとも、それを知るきっかけへと繋がったのだろうと。

 

思えば、テレビや映画が好きだったあなたは、

幅広いジャンルでの知識がありました。

 

あなたを見送り、無意識のうちに、

あまりテレビをつけることがなくなった我が家では、

気が付いてみれば、

たまたま耳にしたり、目にする情報というものが、極端に減ったように思います。

 

テレビを観るのか、観ないのか、

そこに正しいも間違えもないのでしょうが、

あの頃のあなたを思い返してみると、

テレビが好きな人は、情報に偏りのない人なのかも知れないと、

ふと、そんな気がしました。

 

カワセミを知らなかったあの子ですが、

その代わりに、私が知らないことをたくさん知っています。

 

恐らく、今のあの子なら、

あなたも思わず唸ってしまうような知識も持ち合わせているはずです。

 

テレビをあまり観ないあの子と私は、

恐らく、知識に関して、歪な形をしているのでしょう。

 

私たち家族の中で、唯一、テレビが好きだったあなたは、

私たちの歪な形を丸に近づけてくれた人だったんだなって、

カワセミを知らなかったあの子の話から、

そんなことを考えさせられました。