拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

向き合わなければならなかった気持ち

あなたへ

 

ここ最近のこちらでは、雨や曇りの日が続いています。

 

最後に青空を見たのは、いつだっただろうか。

 

考えてみても、思い出せないくらいに、

遠い過去のような気がしてしまいます。

 

晴れない空を、ただ眺めながら、

あなたのことを考えていたり、

何かを考えているようで、何も考えていなかったりと、

ここ最近の私は、なんだかとても、

ボーッとしていました。

 

冴えない気持ちは、天気のせい。

 

そう決めつけたまま、空を見上げたはずだったのに、

突然に、

モヤモヤとした冴えない気持ちと向き合うことになってしまったのは、

何故なのでしょうか。

 

晴れない空を、何度も空を見上げながら、

不意に気付いてしまったのは、

あなたが側にいてくれたあの頃は、暗い空が続く毎日だって、

こんな気持ちになど、ならなかったということ。

 

そうか。

冴えないこの気持ちは、あなたが此処にいないからなのだと、

その答えを明確に捉えてしまった私の中には、

たくさんの気持ちが、言葉として浮かんでしまったのです。

 

本当は、あなたがいないこの人生を生きることが、

不安で、不安で、仕方がない。

 

私はこの先、ひとりで、

どんなふうに生きていくのだろう。

 

この先ずっと、

楽しいことは、倍にはならないし、

悲しいことも、もう半分にはならない。

全部、「 1 」なの。

 

どんなに手を伸ばしても、

その温もりに手が届くことはないまま、

私は、ずっと、ひとりぼっち。

 

あなたは、もう、側にはいてくれない。

 

私は、ひとりぼっちなんだ。

 

ずっと、言葉にすることを避け、

ただモヤモヤとしたものとして、それを抱えながら、

この一生を生きるはずだったのに、

あろうことか、私は、

モヤモヤとしたその気持ちに合う言葉を、みつけてしまったのです。

 

あぁ、遂に言葉にしてしまった。

 

罪悪感に苛まれ、吐いた小さなため息とは裏腹に、

心の中のモヤモヤとした気持ちに言葉が与えられると、

それらは、収まるべき場所へと収まり、

私の心の中は、霧が晴れたかのように、澄んで見えました。

 

そうして、澄んだ心の中に残っていたのは、

純粋にあなたを愛する気持ちと、

胸の奥のつかえが取れた、ただ静かな悲しみでした。

 

私は、掛け替えのない、大切な人を亡くしてしまったのだ と。

 

私の中のモヤモヤとした気持ちを、

あなたに逢いたいと、そう表現しただけで、

他の言葉を使うことが憚られたのは、

あなたが最期の時まで、

生きることを選択し続けていたことを知っているから。

 

その意識がなくとも、

必死に生きようとしたその姿は、

何処にもいかない

ずっと、側にいたいって、

そんなあなたの声でした。

 

だから私は、

あなたに恥じないように生きなきゃ、

あなたの分も頑張らなくちゃって、

必死で自分を奮い立たせることが出来ました。

 

どんなに転んでも、立ち上がることが出来たのは、

全部、あなたのお陰なの。

 

だから、

どうして、死んじゃったの?

そんなふうには、絶対に考えてはいけない。

 

だって、あなたは、

本当はもっと生きたかったこと、私が一番よく知っているもの。

 

そして、私は、

私の中にある全部の気持ちに合う言葉を、みつけてはならない。

 

だって、本当の気持ちを全部、言葉にしてしまったら、

あなたは、きっと、悲しい顔で笑うもの。

 

だからね、

私の心の中の感情に、合った言葉をみつけてもいいのは、少しだけ。

 

私は、いつの頃からか、無意識に、

そんな決まりごとを作っていたのだと思います。

 

それは、私にとって、

本当は、苦しいことだったのかも知れません。

 

その苦しさにさえ、気付かないまま、

ただ、晴れない空を、ボーッと見上げていた私は、

無意識のうちに、

自分で自分を救うことを選んだのでしょうか。

 

あなた

ごめんなさい

 

本当は、私、

あなたが此処にいないことが辛くて、不安で、仕方がない

 

そう呟きながらも、

霧が晴れた私の心は、今、とても軽く、

また、新たな一歩を踏み出せそうな、そんな気がします。

 

一生、言葉をみつけないと、

そう決めていたモヤモヤとした気持ちは、

いつかは、向き合わなければならなかった気持ちだったのかも知れません。

 

それは、また一歩、前に進むために、

乗り越えなければならない苦しさだったのだと、

澄んだ私の心が、それを教えてくれました。