拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

最後の応援団

あなたへ

 

俺が学校辞めたいって話した時にさ、

いつか学校辞めなくて良かったって、

そう思える日が来ると思うよって、言ってたけれど、

お母さんのあの言葉は、本当だったよ

 

あの時は、そんな日は絶対に来ないと思っていたけれど、

本当に来たよ

 

これは、野球の応援団長としての役割が決まり、

間も無くの頃のあの子の言葉。

 

インターネットで応援団のことを調べながら、

熱心に研究を重ねるあの子の姿は、本当に楽しそうでした。

 

あの子の通う高校が、野球大会へ出場したのは、先日のことでした。

 

あぁ、遂に今日が来たよ

野球部の友達が、絶対勝つよって、言ってたから、

今日は、勝って帰って来るからね

 

当日の朝は、そんなふうに張り切って、

あの子は、いつもよりも早くに出掛けたのでした。

 

あの日ばかりは、

仕事をしながらも、試合はどうなったのかと、

気になって仕方がなかった私。

 

休憩時間にインターネットで結果を確認してみると、

あの子達は今、悔し泣きをしているのかも知れないと、

そう連想させるような数字が、画面に映し出されました。

 

どちらかが勝てば、どちらかが負ける

それが、試合というもの

分かりきったことではありましたが、やはり、胸が痛かった。

 

応援団、お疲れ様

精一杯、頑張ったね

 

そんなメッセージを送れば、

 

なんで知ってるの?

今日は応援団の打ち上げがあるから、

帰りは遅くなります

 

ニコニコマークと共に送られてきた、あの子からの返信。

 

想像していたよりも、

ずっと元気そうな返信に、私は、安堵したのでした。

 

そうして、少し遅い時間に帰宅したあの子は、

その日の出来事を、話して聞かせてくれました。

 

打ち上げが楽しかったことや、

対戦高校の応援団長が、とても可愛い女の子だったこと

 

応援では、練習の時よりも、

随分と盛り上がることが出来たこと

 

友達の活躍

 

そして、

 

帰りの集会では、先生もみんなも泣いていたけれど、

俺は、泣かなかったんだ

 

そう話してくれたあの子は、ポツリと言いました。

 

応援団長としての仕事、終わっちゃったな と。

 

そうして、黙り込んだあの子に、

 

落ち込んでいるんだね

 

そう、声を掛けると、

 

俺、今、落ち込んでいるのかなって、

力無いあの子の声は、今にも泣き出しそうに聞こえました。

 

あの子にとって、応援団長としての役割は、

この高校生活の中で、一番楽しい時間であったのだと思います。

 

二回戦のための応援団の練習や、試合の日のためにと、

予定を入れずに開けておいたあの子のスケジュールは、空白の予定へと変わり、

気を紛らわせるかのように、寝転がって、ゲームをするあの子の姿に、

私は、何も言えずに、ただ黙って、見守りました。

 

あれから間も無くして、

学校へ返却するために、タスキやハチマキにアイロンを掛けた私は、

きっともう、応援団のものにアイロンを掛けるのも、

これが最後なのだろうと、

なんだかひとりで、シンミリとした気持ちで手を動かしました。

 

私もまた、あの子と同じように、

自分で思っていたよりもずっと、

落ち込んでいたのかも知れません。

 

悔しい結果ではありましたが、

野球部のみんなも、応援するみんなも、

本当によく頑張りました。

 

立派に声変わりをしたあの子の声は、

あなたのところまで届いたでしょうか。

 

きっと、これが最後になるであろうあの子の応援団の姿。

 

きっと何処かで、

見ていてくれたと、信じています。

 

 

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