拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

コトバ -心霊写真-

毎年のお盆に

彼の実家の地域で行われる花火大会に出掛けるようになったのは

あの子が生まれ

どれくらいが経った頃からだっただろうか

 

彼の家族と皆で一緒に花火を観に行くことが

いつの頃からか恒例の行事となっていた

 

彼が息を引き取ったあの年も

彼の家族が誘ってくれたんだ

 

気晴らしになるかも知れないから

一緒に行こうよ と

 

あの年の私は

毎年 花火の写真を撮ってくれていた彼を真似て

花火に向かってシャッターを切った

 

花火の写真を撮るのが苦手な私が

何故か花火の写真を撮ってみようと思ったのは

泣き出しそうな気持ちを

ただ他に向けたかったからなのかも知れない

 

花火大会が終わり

彼の実家で

花火の写真を見ていると

そこには彼が映っていた

 

上手く笑えないままの私に

ここにいるよ

とでも言いたげに花火の写真に写り込んだ彼の姿に

私の胸は苦しく

そして

温かかった

 

これは

彼が息を引き取ってから起こった

数々の不思議な出来事の中のひとつ

 

類別するならば

心霊写真という類に属することになる彼が映った花火の写真を

時々眺めては

そこに彼を確認し

私は安心することが出来た

 

あれからも毎年

欠かすことなく

あの頃と同じように

彼の家族と花火大会に出掛ける

 

今年も来たよ

 

一発目の花火が打ち上がると

決まって空を見上げながら

こっそりと彼に報告するのが

私だけの恒例行事となった

 

そうして

花火の写真を撮っては

そこに彼を探してしまうけれど

あの年以来

写真の中に彼が映ることはなくなった

 

きっともう

彼が写り込むことはないのだろう

 

なんとなくそう感じながらも

何処かに彼がいる証を見つけたくて

私はきっと

これから先も

花火の写真を撮っては

彼を探してしまうのだろう

 

怖い話が苦手で

その類のものがテレビで放送されれば

彼に擦り寄っていた私が

この世の者ではなくなってしまった彼を

懸命に探してしまうだなんて

思ってもいなかったよ

 

彼は笑っているだろうか

そういうの怖いんじゃなかったの?なんてさ

 

あなただけは別だよ

 

私がそう答えることを知っているくせに

意地悪な質問を投げかけて

何処かで笑っているのかも知れない

 

もう二度と

その姿を見ることが出来なくても

彼が何処かで笑ってくれているなら

それでいい