拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

選んで生まれた人生

あなたへ

 

ねぇ、あなた

とても、重大なことに気が付いてしまったの

 

なんて、深刻な顔で、話をしたのなら、

あなたきっと、笑うのでしょう。

え?今更? って。

 

あの子が、おじいちゃんになるまで生きてみたい

それまで待っていてね

 

そんな手紙を書いたのは、先日のことでしたね。

 

あなたを見送り、

きっと、長く生きることは出来ないのだろうと考えていた私が、

ずっと先の、未来の自分を想像出来るようになりましたが、

ふと、気が付きました。

 

人生80年、いえ、100年とも言われるこの時代。

 

よく考えてみたら、

私って、人生の半分以上、ひとりじゃん!

 

ずっと先のことを想像し、

何才頃には、こんなふうになっているかしらと、

未来を思い描きながら、指折り数えてみれば、

私は、ひとりで、とんでもなく遠い場所を目指す決意をしたのだと、

漸く、気が付いたのでした。

 

ねぇ、ちょっと待って!

なんで、この人生選んで生まれてきたの?

 

思わず、苦笑いしながら、

あなたの顔を、見つめてしまいました。

 

ねぇ、あなた

私たちが出会うには、この人生しかなかったの?

 

もっとさ、緩やかで、穏やかで、

あなたと2人で、ゆっくりと人生を歩んで行けるような、

そんなコースはなかったの?

 

もしも、あなたに、こんな問い掛けをしたのなら、

あなたは、きっと、私の言葉を可笑しそうに聞きながら、

私の髪を撫で、優しく抱きしめてくれるのでしょう。

 

先は、まだまだ長いね

 

これは、あなたを見送ったばかりの私が、

年の離れた先輩に掛けられた言葉。

 

今を生きるだけで、精一杯だったあの頃の私には、

理解することが出来ずにいましたが、

今になって、漸く、

その言葉への答えが、分かるようになりました。

 

本当ですね

とてつもなく、長いでしょうね

 

今の私なら、こう即答するのでしょう。

 

ため息を吐きながらも、今の私は、

この人生を降りるつもりなど、毛頭ない。

 

改めて、ずっと先の未来を想像しながら、

何これ?って、なんだか笑っちゃうけれど、

長く生きると決めた今の私なら、きっと、大丈夫。

 

もっと穏やかなコースだって、あったでしょ?

よりにもよって、なんでこれなの?なんて、

生まれる前の自分に悪態を吐きながらも、

それでも、今の私は、

先へ進んでみたいと思ってしまうのです。

 

ねぇ、あなた

 

次は、平坦で、緩やかで、

時々、小さな石ころが転がっているような人生を、

2人で、手を繋いで、ゆっくりと歩んでみたいね。

 

また、あの子が、私たちの元に生まれてきてさ、

今度は、2人で一緒に、あの子の成長を、全部、見守って、

 

いつの日か、あの子が、将来の夢をみつけたのなら、

2人で、全力で背中を押してあげたいね。

 

大丈夫だよ

君なら出来るよ

ここで見ていてあげるから、やってごらんって、

あの頃みたいにさ。

 

いつか、あの子が巣立った後は、

また2人きりに戻ったねって、笑ってさ。

 

毎日デート出来るね なんて言ったら、

あなたは、どんな顔をするのだろう。

 

2人で散歩に出掛けた時には、言ってね

手でも繋ぎますか?って、

あの時と同じように。

 

皺々のおじいちゃんとおばあちゃんになっても、

ずっと変わらずに、名前で呼び合っていたいね。

 

今度は、そんな人生を、あなたと一緒に、歩めますようにって、

時々、そんなことを考えながら、

今は、自分で選んで生まれたとされているこの人生を、

精一杯、楽しんでみるよ。