拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

抜け落ちた記憶

あなたへ

 

私は、どれだけの記憶を、

あの夏に置いてきてしまったのだろう。

 

あなたが好きだった缶コーヒーを眺めながら、

そんなことを考えていました。

 

先日、ふと、思い出して、

あなたにお供えした、缶コーヒー。

 

実はね、

あなたが好きだった缶コーヒーを、

これまでに一度も思い出さなかったことが、

なんだか、とてもショックだったの。

 

だって、草取りの時のジュースタイムは、

私たちにとって、何度も過ごした恒例の時間だったもの。

 

お盆には、あなたが好きだったものをたくさん揃えて、

あなたをお迎えしていたつもりだったのに、

どうして、今まで一度も、缶コーヒーのことを、

思い出すことがなかったのだろうって。

 

人は、強いショックを受けると、

大切だったはずの記憶を、

置き忘れてきてしまうものなのでしょうか。

 

私は、どれだけの記憶が抜け落ちたまま、

ここまでを歩んできたのだろう。

 

一度思い出してみれば、

これまでの私が、何故思い出すことがなかったのだろうかって、

きっと、これからも、

そんな場面が、たくさんあるのかも知れませんね。

 

あの時のあなたは、こんなふうに笑っていたなとか、

あの時のあなたは、こんなふうに言っていたなって、

あの頃の記憶を、ひとつひとつ、

拾い集めながら、これまでを歩んで来た私ですが、

私は、きっと、これから先も、

あの夏に置いて来てしまった記憶を、

拾い集めながら、生きて行くのでしょう。

 

あなたのお気に入りだった缶コーヒーを、何度も眺めながら、

小さなため息をひとつ。

 

人生、きっと、まだまだ長いもの。

 

大切なものを集め直しながら、

ゆっくりと、生きていけば良い。

 

きっといつか、大切な宝物を全部、

見つけることができますように。