拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

小さな声の約束

あなたへ

 

この時期になると、手荒れしてしまう私。

洗い物をする時に、お湯を使うせいなのでしょうか。

肌が弱い私にとって、手荒れは、この時期の悩みの種です。

 

私の手をまじまじと見つめ、

 

手、どうしたの?荒れてるね

今度、洗い物、俺がやってあげるよ

・・・今度

・・・時間があったら・・・

 

どんどん小さくなるあの子の声に笑ったのは、

先月頃のことだったでしょうか。

 

アルバイトをするようになり、

初めて手荒れを経験したあの子は、

家事へ対する見方が、少しずつ変わって来たようです。

 

でも、実は、あの子の今度の約束には、

あまり期待などしていませんでした。

 

だって、あの約束は、余りにも小さな声だったもの。

 

それなのに、

先日、あの子が突然に、洗い物をしてくれたのです。

 

腕まくりをして、

キッチンに立ったあの子は、

 

早く手荒れが治るといいね

 

そんなふうに言ってくれたのでした。

 

洗い物をしてくれるあの子の背中を眺めながら、

立派に成長してくれたんだなと、

ただ、素直に感動してしまいました。

 

あれからのあの子は、

 

家事って大変だよね

 

そんなふうに言いながら、

出来る範囲での家事を手伝ってくれるようになりました。

 

あなたを見送り、成長と共に、

部活や勉強、武道のお稽古、アルバイト、友達との時間と、

忙しなく動き回るようになったあの子が、

こんなふうに、お手伝いをしてくれる日が来るだなんて、

思ってもいませんでした。

 

家事を手伝ってくれるあの子の姿に、

ふと、思い出したのは、

あの子が幼かった頃のことでした。

 

幼い頃は、なんでも私たちの真似をして、

お手伝いをしたがったあの子。

 

そんなあの子の姿に、

あなたは、目尻を下げて見守っていましたね。

 

上手に出来たね って。

 

今日のあなたは、何処かでこの手紙を読みながら、

あの頃と同じ顔で、笑っているのでしょうか。