拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

月のうさぎ

あなたへ

 

昨夜は、眠る前に、ベランダに出て、月を眺めていました。

漆黒に浮かぶ丸い光に、

ふと、思い出したのは、幼い頃のことでした。

 

あれは、私が幾つくらいの頃だっただろう。

 

あなたと出会うずっと前の、幼かった私には、

月の中に、うさぎが見えていました。

 

月には、うさぎが餅つきをしている模様ある、なんて言われているけれど、

そうではなくてね、

私には、大きなうさぎが、こちらを見ているように見えていたの。

 

窓の外に浮かぶ月を眺めながら、

月には、本当にうさぎがいるんだって、感動したこと、

今でも、よく覚えています。

 

お父さん、月にうさぎがいるよ

ほら、見て?うさぎもこっちを見てるよ

 

私の声に、夢があっていいねと、笑った父の言葉に、

幼いながらも、

大人になると、あのうさぎは、見えなくなるのかも知れないと考えたのでした。

 

冷たい夜風に当たりながら思い出した、幼い頃の記憶に、

今の私にも、月のうさぎが見えなくなってしまったことに、

漸く、気が付きました。

 

私は、いつから、

あの、月のうさぎが見えなくなってしまったのだろう。

 

幼い頃とは不思議なもので、

無知であるからこそ、

見えていたものがあったのかも知れませんね。

 

私ね、子供の頃は、月にうさぎが見えていたの

こんな形のうさぎでね、

月から、こっちを見ていたんだよ

 

もしも、あなたにそんな話をしたのなら、

あなたは、どんな言葉を返してくれたのだろう。

 

俺は、こんなふうに見えていたよ

 

きっと、幼い頃のあなたにも、

そこに、私とは違う何かが見えていたのでしょう。

 

今の私に見えるのは、

心が優しくなれるような、ただ、穏やかな光。

 

ねぇ、あなたの場所からは、

どんなふうに月が見えますか。