拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

お弁当作りの3年間

あなたへ

 

あれ?紫色のトマト、食べてくれなかったの?

 

え?それ、食べられるの?

腐ってるのかと思ったよ

ごめん

 

いつかのあの子との会話を思い出していました。

 

あれは、あの子のお弁当に、

赤いトマトと紫色のトマトを飾り付けた日のことでした。

 

あの日の私は、初めて購入した紫色のトマトを飾り付けながら、

学校で、お弁当箱を開けた時のあの子が驚く顔を想像したのでした。

どんな顔で、紫色のトマトを食べるのだろうって。

 

それなのにです。

 

あの日の夕方、お弁当箱を受け取ると、

紫色のトマトだけが、残されていたのでした。

腐っていると思われて。

 

思えば、我が家の食卓には、赤か黄色のトマトが並びます。

初めて購入した紫色のトマトを、

嬉々として、あの子のお弁当箱へと入れた私でしたが、

あの子の目には、正常な食べ物としては映らなかったようです。

 

腐ったものをお弁当に入れるだなんて、

お母さん、呆けちゃったのかと思ったよ

 

そんなあの子の言葉に笑いながら、あの時、

見たことがない食べ物は、

お弁当に入れてはいけないと学んだのでした。

 

あれは、この3年間の中で一度だけ、

お弁当の中身が残されていた日でした。

 

あの子へのお弁当作りの日々が、終わりました。

 

正直に言ってしまえば、

時には、面倒に感じることもありましたが、

あの子のごちそうさまの声と共に受け取る、空っぽのお弁当箱が、嬉しかった。

今朝も頑張って良かったなって。

 

苦手な料理が上達することが出来たのは、

美味しかったよって、

あの子が添えてくれる言葉があったからでした。

 

最後のお弁当は、

あの子の一番のお気に入りの、グラタンのお弁当を作りました。

ずっと前から、最後のお弁当には、

あの子のお気に入りの、グラタンのお弁当にしようって決めていたの。

 

お弁当の最終日にも、

あの子の、美味しかったの言葉を聞くことが出来ましたよ。

 

大変なことも色々とありましたが、

あの子の言葉に支えられて、

無事に、3年間のお弁当作りを終えることが出来ました。