拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

車の中

あなたへ

 

私が、初めて、車を運転中しながら泣いたのは、

あなたが入院し、間も無くの頃のことでした。

 

あなたは、よく風邪を引いたけれど、健康で、

それまで一度も、入院したことなど、ありませんでしたね。

 

交通事故に遭ったこともあったけれど、

あなたはあの時も、家に帰って来てくれました。

心配しながらも、入院が必要なほどではないのだと、

あなたの身の回りのことをしながら、

いつも通りのその笑顔に安堵したのでした。

 

あなたが家に帰って来てくれること。

それは私にとって、どんなに心強いことだったか。

あなたは、知っていましたか。

 

微かに聞こえるあなたの車の音と、ただいまの声は、

あの頃の私にとって、

今日も無事に1日に終わったよって、

そんな合図のように感じていました。

 

あなたが入院するという初めて事態に、

不安で、心細くて、

車を運転しながら、泣いてしまったことは、あれから、何度あっただろう。

 

いつかこれが笑い話になればいい。

退院したあなたと一緒に、この涙を笑える日が来ますようにと、

強く、強く願いながら、

涙を拭いて運転したことは、何度あったのだろう。

 

あの夏から、

私は、

運転しながら、

何度、泣いたのだろう。

 

歌を楽しむのも、

移り変わる景色を楽しむのも、

あなたを想い、不意に泣いてしまうのも、

車の中。

 

ふと、あなたのその手に触れられる気がして、

左手を優しく握り締めれば、虚しく空気を掴み取ったまま、

涙を拭いて運転することは、あの夏から何度も繰り返しながら、

それでも、いつか、みつかる気がして。

 

どれだけの時間が経っても、

私は、あなたを探してしまうよ。

 

今日もまた、その手の温もりを、

みつけることが出来ないままに。

 

 

 

 

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