拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

あの子の秘密基地

あなたへ

 

最近のあの子を見ていると、

なんだか、若い頃の自分を見ているようで、笑ってしまいます。

 

かつての私にとって、自分の車の中は、

秘密基地によく似た場所でした。

いつかの私は、あなたにそんな手紙を書きましたが、

念願だった車を手に入れたあの子もまた、

あの頃の私と全く同じように、車内を楽しんでいるようです。

 

先日、あの子の車に乗せてもらった時のことでした。

用事を済ませた私たちは、買い物に寄ることになりました。

 

すっかり運転に慣れてしまった私は、

ここを曲がった方が近いよと、思わず、口出しをしてしまいましたが、

それに対するあの子の返事は、こうでした。

 

うん、いいの

今日、時間あるでしょ?

遠回りしたいの

俺は、運転がしたいんだよ

俺の気持ち、分かるでしょ?

 

運転席に座っていたのは、かつての私そのものでした。

 

今のあの子にとって、

車内という秘密基地にもよく似た場所は、とても特別な場所。

そこにいるだけで、とてもワクワクとするのです。

 

近道など、求めていません。

それどころか、わざわざ遠回りをしながら、車内を楽しんでいたいのです。

ガソリン代なんて、全く関係ありませんし、

時間が許す限り、秘密基地で過ごす時間こそが、至福の時間なのです。

 

そうだった

うん、分かる

凄くよく分かる

存分に、遠回りを楽しんだらいいよ

 

そんな言葉と共に、

あの子の運転する車の中、私は、ゆっくりと景色を楽しんだのでした。

 

外出から帰って、駐車場に車を停めても、

あの子は暫く、車から出て来ません。

だって、ただそこで、

車内という特別な空間を楽しまなくてはならないのですから。

 

きっとそこには、

運転中には見せなかった、

あの子だけの秘密基地を楽しむ時間が存在するのでしょう。

 

車内でひとり、ニンマリとしながら、

車内のあちこちに触れてみたり、

ここにこれを置いたら、もっと快適になるはずだと、空想してみたり。

 

そこにはきっと、

それはそれは、楽しい時間が流れているのでしょう。

 

もしも、あなたが此処にいてくれたのなら、

そんなあの子を微笑ましく、2人で見守りながら、

あなたはきっと、

私たちが出会う前の話を聞かせてくれたのでしょう。

 

俺が免許を取ったばかりの頃はね って。

 

あなたの話に耳を傾けながら、

今の私は、どんなふうに、笑っていたのでしょうか。

 

コロナウイルスの観点から、

不要な外出は、控えているあの子ですが、

出掛けなければならない用事から、

一度、車内へと乗り込めば、

もう、楽しくて仕方がないようです。

 

こんな事態がなければ、

きっと、色々な友達を乗せて、

様々な場所へと出掛けたのでしょう。

 

可哀想ではありますが、今は、我慢の時。

命が一番、大切です。

 

またいつもの生活に戻る日を願いながら、

今は、自粛をしつつ、

あの子だけの秘密基地を楽しんでくれたらと思っています。

 

 

www.emiblog8.com