拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

あなたの声が聞けるまで

あなたへ

 

あの子が、あなたの夢を見たよと話をしてくれました。

 

夢の中の舞台は、

私たち家族3人で暮らしていた、あの家だったそうです。

 

そこで、あの子が最初に見たのは、

あなたが庭に作ってくれた自転車置き場に置かれた、

あなたのバイクと、あの子のバイク。

 

それは、

もしも、あの時の運命が違っていたのなら、

きっと見ることの出来た、いつもの光景だったに違いありません。

 

あの子の夢の中。

 

あなたが此処にいてくれることが当たり前の世界では、

あの頃の続きのような日常生活を送ったそうです。

 

あなたが側にいてくれたその夢は、

とても長い夢だったと話してくれました。

 

長い夢の中を反芻したあの子は、

ポツリと言いました。

 

こんなふうに、お父さんの夢を見るとさ

帰って来てくれるんじゃないかなって、考えちゃうよね

お父さんに、逢いたいね

 

そんなふうに寂しがったあの子は、

夢の中で、あなたと話をしたはずなのに、

やはり、あなたの声は覚えていないのだと、話してくれました。

 

お母さんは、お父さんの声、覚えてる?

 

そんなあの子の言葉に、

耳の奥に聞こえたのは、私を呼ぶあなたの声。

 

うん

覚えているよ

 

私の言葉に、あの子は、少しだけ寂しそうな顔を見せました。

お父さんの声って、どんな声だったかな って。

 

今度こそ、ビデオを観てみようね

 

あなたの声が入っていることを知っていながら、

いつまで経っても再生する勇気の出ないビデオカメラ。

ずっと、頭から離れないままに、

私は何度、あの子と、今度の約束をしたでしょうか。

 

でもさ、それを観たら、お母さん、泣くでしょ?

嫌だよ

 

あの子との今度の約束には、

毎回、こんな言葉がありました。

 

泣かなくなる日が来るまで。

 

そう考えていましたが、あの頃のあなたの声を聞けば、

どんなに時間を重ねても、

きっと私は、泣いてしまうのでしょう。

 

漸く、それが分かるようになった私は、

間も無く、

あの頃のあなたに、逢いに行けるような気がします。

 

あなたの声を聞ける日が来るまで、きっと、あと少し。

 

 

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