拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

真新しい道

あなたへ

 

お父さんみたいになりたい

 

あの日のあの子の声は、

あなたのところまで、届いたでしょうか。

 

あの子が、自分の歩む道を決めたのは、

あなたの3回目の命日のことでした。

 

あの日のあの子は、

将来、あなたみたいな大人になりたいのだと、

真剣に話をしてくれたのでした。

 

「つくる」が仕事だったあなた。

 

あの日のあの子は、まだ、

漠然とした「つくる」の道を歩みたいと決めただけでしたが、

あれから、暫くが経つと、

具体的に、どんな道を歩みたいのかを、話して聞かせてくれました。

 

俺が小学生の頃にさ

お父さんに、

大人になったら、自分で設計した家に住みたいって言ったんだ

そうしたら、お父さんが、

設計図の書き方を教えてくれたの

その時のお父さんが、凄く嬉しそうでさ

だから、俺、その道に進もうって決めた

こんなふうに将来を決めるのって、変かな

 

あの日、あの子が話してくれたのは、

私が知らない、あなたとあの子、2人だけの時間の記憶でした。

 

全然、変じゃないよ

 

少しだけ、不安そうに話してくれたあの子の将来の夢。

あの日、あの子の背中を力強く押すと、

あれからのあの子の夢は、ブレることなく、

そこへ向かって、真っ直ぐに歩み始めました。

 

俺、ここの専門学校に行きたい

 

高校2年生になったあの子が見せてくれたのは、

この辺りにある専門学校のパンフレット。

決意を固め、何の迷いも見られないあの子の言葉に頷きながら、

私は、更に力強く、あの子の背中を押したのでした。

 

分かった

頑張りなさい

 

そうして、

高校3年生の早い段階で、

希望とするその専門学校への入学が決まりました。

 

専門学校に入学したら、

この資格と、この資格は、絶対に取りたいんだ

楽しみだな

 

あの子は、ずっと、

専門学校へ通う日を、とても楽しみに待っていました。

 

本当なら、今頃のあの子は、

入学式を終え、大きな一歩を踏み出しているはずでした。

 

先月、学校で行われた用品販売の際に渡されたのは、

コロナウイルスの観点からの、入学延期の知らせ。

そこには、4月末頃から登校予定の記載がありましたが、

先日、更に延期の知らせが届きました。

 

こちらでの、この異常な事態です。

手紙に目を通しながら、そうだよねと、

その決定事項に、あの子と2人で頷きました。

 

入学は延期になりましたが、先月の用品販売から、

あの子の手元には、たくさんの勉強道具が揃いました。

 

非常に重いので

丈夫なバッグを準備して下さい

 

用品販売の案内に添えられていたこんな言葉に、

どれだけの量なのかと、あの子と2人、笑いましたが、

その言葉の通り、

手渡されたのは、非常に分厚い教科書や、大量の専門道具でした。

 

専門道具を広げてみれば、どれもが見覚えのあるものばかり。

これも、これも、お父さんが持っていたものだね って。

 

入学は延期になってしまったけれど、

家で勉強するといいよ

 

こんな私の言葉から、嬉しそうに教科書を開いたあの子でしたが、

数秒後には、教科書を閉じて、大きなため息をひとつ。

俺、こんなの出来るのかな って。

 

初めて学ぶことは、なんでも難しく感じますね。

 

もしもあなたが此処にいてくれてのなら、

きっと、今頃、我が家に聞こえるのは、あなたの声。

 

何も難しいことはないよ

図工だと思って?

 

あなたの第一声は、こんな言葉なのでしょう。

 

そうして、始まったあなたの授業は、

私までもが、思わず聞き入ってしまうような、

楽しい授業だったに違いありません。

 

今、あの子の目の前に続く、真新しい道は、

あの子の中に刻まれた、あの頃のあなたの笑顔が、

導いてくれた道です。

 

お父さんみたいになりたい

 

あなたを見送り、3年目に辿り着いたあの子の将来の夢は、

少しずつ形になりつつあります。

 

楽しみにしていた入学式は、もう少し先になりますが、

どうやら、

大量の課題が送られて来るらしいとの情報が入りました。

 

思い描いていた始まりの形ではなかったけれど、

1日1日を大切に、

夢に向かって歩んで行ってくれるといいですね。

 

 

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