拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

コトバ -隔てるもの-

彼が此処にいないなんて嘘だよ

 

目を閉じれば

必ずそこにいてくれる彼に

必死で手を伸ばしたことは

これまでに何度あっただろう

 

瞼の向こう側にいる彼が

消えてしまわないようにと

ギュッと目を閉じたことは

これまでに何度あっただろう

 

次に目を開いた瞬間に

彼がすぐ側にいますようにと願いながら

 

ゆっくりと

 

ゆっくりと

 

目を開いたことは

これまでに何度あっただろう

 

何度同じことを繰り返してみても

私の視界に入るのは

彼と一緒に住んだことのないこの部屋の景色と

彼がいないこの世界

 

落胆しながら

彼の遺影の前へと座り

じっと彼の顔を見つめてみる

 

私は何度

こんな時間を過ごして来たのだろう

 

彼の遺影を見つめてみても

彼が此処にいないなんて

やっぱり

信じられなくて

私は何度

遺影の向こう側を見ようとしてきただろう

 

彼が此処にいないなんて嘘だよ

何度もそう呟きながら

 

ねぇ

死ぬってなんだろう

 

私の疑問に

いつも通りの微笑みを返す彼だけが

あの夏の続きを知らないだなんてさ

 

きっと嘘だよ

 

私は

彼の最期を看取ったにも関わらず

彼の死と向き合ってなどいないのだろうか

 

彼と私を隔てるもの

 

死とはなんだろう

 

私はこの先もずっと

この気持ちと共に生きていくのだろう