拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

永遠の親孝行

あなたへ

 

子供はね、3歳までに親孝行をするんだよ

3歳までは、本当に可愛いんだよ

天使だね

その後はね、お金だよ

子供が大人になるまでに、いくら掛かるか知ってる?

1000万円以上掛かるんだよ

3歳までに、その可愛さで、一生分の親孝行をしてもらったら、

そこからの親の役目は、お金を準備することなんだよ

 

これは、いつかの先輩の言葉です。

 

我が子が、

どんなに愛おしい存在であるのかを知ったばかりだったあの頃の私は、

小さなあの子を抱いて、

この可愛さは、3歳までのものなのだろうかと、

真剣に考えたことがありました。

 

いつか、この愛情が少しずつ薄れ、

今よりも、可愛いと感じなくなる日が来たらどうしよう

 

こっそりと、そんな心配までしていたのでした。

 

何もかもが小さくて、ただ愛おしかったあの子。

眠っている時も、泣いている時も、あの子は、ただ、可愛かった。

少しずつ増す重さにも、幸せを感じました。

 

声を出して笑うようになったあの子。

言葉にならない声を出して、お話をするあの子。

私たちにしか分からない言葉を話すあの子。

自分の主張が出来るようになったあの子。

 

いつでも、今が、いちばん可愛いと思いながら、

あの子の成長を見守りました。

 

今が、いちばん可愛い。

 

そんな毎日を送りながら、

幼稚園に上がり、

小学校へ上がっても、

『今が、いちばん可愛い』は、更新されていきました。

 

クリスマスに、小さなサンタさんが来てくれるようになったのは、

あの子が小学生の頃でしたね。

朝、目が覚めて、

枕元にみつけたプレゼントには、本当に感動しましたね。

 

私の言うことを聞かずに、

自分のやりたいようにするあの子の姿に、

やはり、私の血を引いているのだなと、なんだかとても関心し、

そこに愛おしさをみつけたりもしたのでした。

 

あの子が中学生になり、初めての夏休みに、

あなたは、此処からいなくなりました。

 

あなたを想いながら、共に寄り添い、歩んで来たあの子は、

やがて、反抗期を迎えました。

 

悩むこともあったけれど、

無事に反抗期を迎えてくれたことが嬉しくて、

立派に反抗するあの子に向き合いながら、

こっそりと、喜びを噛みしめたのでした。

 

反抗期を迎えながらも、

私が困った時には、必ず助けてくれたあの子は、

頼もしくて、とても可愛かった。

 

高校生になると、

勉強をする意味も、学校へ通う意味も、みつけることが出来ずに、

学校を辞めたいと、

後ろを向いて座り込んでしまったあの子と向き合いました。

 

大人へと近づくあの子の反抗期は、終わりを迎え、

反抗期の頃は、申し訳ありませんでした

なんて、深々と頭を下げるあの子が可笑しくて、

とても愛おしくて、堪りませんでした。

 

高校の卒業式の日には、

お母さんと一緒に、写真を撮りたいと言ってくれたあの子の言葉で、

たくさん苦労したことが、全て、帳消しになったのでした。

 

あの子のお母さんになれて、良かったなって。

 

こうして振り返ってみると、

苦労したことも、大変なこともありましたが、

あなたを見送ってからも、

私は、変わらずに、

いつでも、今がいちばん可愛いと、そう思いながら、

あの子と向き合ってきました。

 

いつまで経っても、今がいちばん可愛いと思えるのは、

その時、その時にみつけたあの子の可愛さが、

大変だったことを、

全て帳消しにするからなのだと思いました。

 

夜泣きをして大変だけれど、とても可愛いのも、

反抗期で大変だけれど、とても可愛いのも、

どちらも同じなのかも知れません。

 

毎日、毎日、

『今が、いちばん可愛い』は、

更新され続けたまま、18年が経ちました。

 

生まれた時から、毎日、

『今が、いちばん可愛い』を積み重ねてきたあの子は、

全部、可愛い。

 

子供は、その可愛さで親孝行をすると言うのなら、

きっと、生まれた瞬間から、永遠に、

親孝行をし続けてくれるのでしょう。

 

小さなあの子を抱いていたあの頃の私には、

成長したあの子のことを、

こんなふうに、愛おしく思うことを、想像することが出来ずにいました。

 

私が感じる、

『今が、いちばん可愛い』は、

この先も、ずっと更新され続け、

あの子が、おじさんと呼ばれる年齢になる頃にも、きっと、

今の私には分からない可愛さが待っていてくれるのでしょう。

 

きっと、どんな時でも、あの子は、とても可愛い。

 

私よりも、少しだけ早くに親になった先輩とは、

もう、連絡を取ることはなくなってしまいましたが、

同じ空の下、

きっと、彼もまた、私と同じように、

あの頃には想像も出来なかった我が子の可愛さに、

毎日、『今が、いちばん可愛い』を、感じていることでしょう。

 

ねぇ、あなたがもし、此処にいてくれたのなら、

今頃のあなたは、

あの子の、どんな『今が、いちばん可愛い』をみつけていたのかな。

 

男同士。

私とはまた違った絆を深め、

今のあなたは、どんなふうに、あの子と笑っていたのだろう。