拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 14

「なんだか、若返ったんじゃない?」
「なにか始めたの?」


いつものお茶飲みメンバーたちが、一気に詰め寄ってきた。


特に何もしていないと言う私の言葉を信じてもらえずに、
この日の話題は、主に、
私の普段の生活についてとなった。


「化粧品変えたの?」
「変えてないわよ。」


「どんな化粧品使ってるの?」
「肌が弱いから、肌に優しいものよ。」


「いつも何を食べてるの?」
「お味噌汁は、出来るだけ毎日飲むようにしているけれど、
あとは、食べたいものを食べているわ。」


お風呂のお湯は何度?
何時に寝て、何時に起きてるの?
朝起きたら、まずは何をしてるの?


彼女達からの質問は、止まることがなかった。


幾つになっても、綺麗でいたい。
いつの時代になっても、
これは女性の永遠のテーマなのかも知れない。


「分かった!恋、してるでしょ?」

これは、私の隣に座る彼女の声。


「恋は、ずっとしてるわよ。夫に。」
「亡くなった旦那さんのこと?今まで、ずっと?」


信じられないとでも言うように目を丸くするのは、
私の向かい側に座っている彼女だ。


「旦那さんが亡くなったのって、若い頃よね?
再婚とか、考えなかったの?」
「考えたこと、なかったわね。」


誰かを想うのに、
その人が何処にいるのかなんて、
きっと関係ない。


私には、他の誰かを想う隙間なんて、少しもなかった。


彼が亡くなり、
その温もりを感じることが出来なくなってしまってからも。
そして、今も。


恋は人を綺麗にすると言う。
私は何度、彼に綺麗にしてもらうのだろう。