小さなクリスマスツリーを飾って、
彼と一緒に、ケーキを食べた。
今日は、クリスマスイブ。
「雪、降らなかったね。」
数十年振りに過ごす、彼と2人きりのクリスマスだから、
雪が降ったら、もっと、素敵だっただろうなって、
なんとなく、そんなことを考えながら、窓の外を眺めた。
『なんで雪?』
「なんとなく。」
それ以上は、言葉にしないまま、
今夜の私たちは、
一緒に過ごしたクリスマスの思い出なんかを語り合いながら、時間を過ごした。
愛してるよ。
今夜も、いつもの挨拶と共に、通話を終了すると、
私は急いで、パーティーのあと片付けをして、準備に取り掛かった。
彼が亡くなってからの、彼へのクリスマスプレゼントは、
毎年、少し遅い時間に、彼の場所へとお供えをしている。
明日の朝、目覚めた彼の枕元に、
このプレゼントが届いていますように。
そんな願いを込めて。
彼が亡くなってから、ずっとそうしてきたけれど、
ところで、彼は眠るのだろうか。
『何色がいい?』
ピンク!
今度は、オレンジ色。
次は、青。
やっぱり、黄色がいい。
もう一回、ピンクに戻して?
『え?もう、めんどくせーな。これでどうだ!』
虹花草が咲く場所に、色とりどりの雪が降る。
「わぁ、綺麗。」
飽きもせずに雪を眺める私を、
不意に後ろから抱き締めてくれた彼は、
私の手をとって、舞い落ちてきたピンク色の雪をひとつ、
掌に乗せてくれた。
それは、瞬く間に、蝶へと姿を変えて、
鮮やかなピンク色の鱗粉を振り撒きながら、
空高くへと、飛び立った。
「凄い!凄く綺麗!」
飛び跳ねんばかりに興奮する私を、
後ろから優しく包んでくれるのは、彼の温もり。
彼が見せてくれたこの景色を、絶対に忘れない。