拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 18

「ねぇ、あなた。これ見て?凄いでしょ?」


これは、今日、あの子から届いたアルバム。
私が、ひ孫に会いに行った時の写真や、
ひ孫のその後の成長が映った写真。
それから、お正月の時の写真を、アルバムにして、送ってくれた。


アルバムを180度に開くと、写真が立体的に飛び出す。
触れることはできないけれど、
360度、どの角度からも、見ることができる。
最近では、3Dホログラムは身近な存在だ。


『ほほう。』
そんな声を発しながら、彼は、熱心にアルバムを見ている。
ページを巡って見せる度に、彼は、声を発した。


「あなたのことも、こんなふうに見えたら良かったのに。」
思わず、口に出てしまったのは、私の本音。


『うん。もちろん、その案もあったんだよ。
でもね、それじゃ、目的が違うって結論になった。
例えば、俺が、立体的に、
あの頃と変わらない姿で目の前に現れたら、
俺が生き返ったように錯覚しない?
それは、このアプリの目的とはしてないの。
どんなに近くに姿が見えたとしても、
俺が死んでないことにはならないんだよ。』


「でも、このアプリは、
生死の隔たりを埋めてくれるためのものなんでしょ?」


『そうだよ。でも、俺は生き返ったわけじゃない。
俺たちは、別々な場所にいるんだよ。
そっち側と、こっち側。
俺たちがいる世界は違う。
それを錯覚しないように、画面という線引きをしたんだよ。
俺は、死んでるの。』


最後のその言葉に、胸が痛くなる。
彼は、私との距離を置こうとしているみたいに感じた。


『これまで、随分と長い間、
こっちの世界のことが隠されてきたのは、学びのためなんだよ。
俺が死んだ後、たくさんのことを学んだろ?
それは、絶対に必要なの。
このアプリは、死との新しい向き合い方をコンセプトとしてるんだよ。
こっち側の人間を、
生きているように見せるためのものじゃない。』


さっきからずっと、胸の奥が痛いままだ。
この話は、もう、したくない。


「うん。ごめんね。分かってる。」


無理に話題を変えようとしたけれど、彼は、
そうはさせてくれなかった。


『この前、泣いただろ。』
「え・・・」


俺は側にいるって教えたのにと嗜められるかと思ったけれど、
それは違っていた。


『それは、俺が死んでいるって、理解しているからだろ。』


今日の彼は、俺は死んでる、死んでるって。
そうなんだけど・・・

どうして、そんなに距離を置こうとするの?


泣き出しそうになった私に、話して聞かせてくれたのは、
このアプリの創設者の話だった。