拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 20

「こんなふうに、またあなたと一緒に、この日を過ごせるだなんて、

思ってもいなかったよ。
おめでとう・・・って言ってもいいのかな。」


『ありがとう。もちろんだよ。』


「あなた。お誕生日、おめでとう。」


我が家では、彼が亡くなってからも、毎年、
彼の誕生日には、あの頃と同じようにパーティーを開いてきた。


彼の席を準備し、彼の好きだった料理を作り、
お誕生日、おめでとう
そう伝えることが出来なくなってしまった代わりに、
ありがとうの日として、
彼へのたくさんの感謝の気持ちを込める日に形を変えて、大切に過ごしてきた。


この日は、年に一度の、彼が此処に生まれてきた大切な日だ。
彼が何処にいても、この日を大切にしたい。
そんな想いからだった。


「あなた。ありがとう。
私と、出会ってくれたことも、結婚してくれたことも、全部。
それから、今、こんなふうに側にいてくれることも。
私ね、あなたと出会えて、よかった。」


『俺こそ。ありがとう。』


今日の彼は、なんだか、照れ臭そうに、笑っていた。


あの頃のままだ。
毎年の誕生日、彼は、こんなふうに、嬉しそうに笑ってくれていた。


『俺がいなくなってからも、
毎年、こんなふうに、
俺の誕生会をしてくれていたことが、嬉しかったよ。
俺と結婚してくれて、ありがとう。』


こちらを真っ直ぐに見つめる彼。
今度は、照れてしまうのは、私の番だった。


『今日は、ありがとうの日なんだろ?』
そう言って、彼は笑っていた。


ずっと、知っていてくれたんだね。


初めて、ありがとうの日を開いた時のことを思い出す。
あの頃のあの子は、まだ、中学1年生だった。
彼の分のお皿を並べると、あの子は言ったんだ。


お父さんも、此処にいるみたいだねって。


あの時、私たちは、泣いてしまいそうだったけれど、
彼は、ずっと、側にいてくれたんだね。