拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 27

充実した毎日とは、こんな毎日を言うのだろう。


夢を持つことが出来た私は、
あれからも、夢を叶えるための活動をしながら過ごしている。


もちろん、彼には、内緒だ。


若い頃のように、夢を持てたことが嬉しくて、
「もう、おばあちゃんなのに。」って、
時々、こんな言葉を口にしながら、なんだか、ニヤけてしまう。


若かった頃、夢を持っていた私は、
それに熱中するあまり、
お昼ご飯を後回しにしてしまうことが度々あった。


ひとりで時間を自由に使えるというのは、
実は、厄介なのかも知れない。


あの頃は、あの子と一緒に暮らしていたとはいえ、
アルバイトや、友達との約束と、
あの子が家を空けることが増え、
休日の日中は、1人の時間を過ごすこと多かった。


休日には、ひとりで、自由に過ごしながら、夢を追いかけていた私は、
お昼ご飯を後回しに、
気が付けば、日が暮れていたことも、しばしばだった。


そうして、
夕食の時間になり、漸く、お腹が空いていたことに気が付くのだ。


今の私も、気が付けば、あの頃に近い状態で日々を過ごしている。


夢中になることがあると、
私にとって、食は、あまり重要ではなくなるのかも知れない。


今日の私も、ついついお昼ご飯を後回しに、
作業に熱中してしまった。

 


『今日のお昼は、何を食べたの?』


「えっと・・・」


あっ、食べてない・・・


「なんだったかしら。忘れたわ。私も年ね。」
そう笑ってみたものの、
こちら側をじっと見つめる彼の目が怖い。


私の食生活が、乱れてしまっていることを、
彼は知っているのだろうか。
近頃の彼は、食事にうるさい。


『ねぇ、今週は、人参、何本食べた?』


「え?」


彼よりも、随分、長いこと生きてきたが、
ここ数日に食べた人参の数など、初めて聞かれた。
それも、私の苦手な人参に対する質問とは。


『明日からは、人参を使った料理が食べたいな。・・・毎日。』


画面の向こう側では、涼しい顔をして、私の苦手な人参が食べたいなどと、
言っている。


そう言われたら、作らないわけにはいかないではないか。


でも、と思う。
あの子と一緒に暮らしていた頃よりも、
料理をする機会が減っただけでなく、
自分の苦手なものを食べる機会も、随分と減った気がする。
だから、彼からの食事のリクエストは、
丁度、良かったのかも知れない。


だって、この夢を叶えるまで、
まだまだ元気に生きなきゃいけないもの。