拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

KANATA 31

いつもよりも早くに目が覚めた私は、
まず、彼にお線香をあげて、手を合わせた。
そうして、
彼が元気だった頃からの記憶を順番に辿りながら、
彼を想う。


今日は、8月8日。
彼の命日だ。


絶対に、この手の温もりを忘れない。


そう誓って、最後に彼の手を握り締めたあの日から、何年が経っても、
彼の手の温もりは、今でもよく覚えている。


目を閉じて、あの日感じた、彼の温もりを思い出して、
ゆっくりと目を開いたところで、鈴の音に似た静かな音が聞こえた。


彼からのメッセージだ。


【今日は、アプリの時間制限がなくなったんだ。
早く逢いたいな。】


胸の奥が、痛くて、
泣き出しそうな気持ちで彼を想っていたはずなのに、
彼からの短いメッセージを、何度も読み返しながら、
いつの間にか、私の胸の奥にある感情は、
別なものへと変わっていた。


・・・早く逢いたいな・・・


「うん!私もよ!!」


彼は、いつでも、こうして私に魔法を掛けてくれる。
元気がなくても、落ち込んでいても、
私を一瞬で、笑顔に変えてくれるのだ。
何処にいても、彼は、変わらない。


さて、こうしちゃいられないわ!

今日は、花火大会。
色々、忙しいわよ。


このアプリには、こちらからのメッセージの返信機能はついていない。
彼は、前に言っていた。
想えばいいと。


「えっと・・・3時頃にどうかな。」


想う。
彼が亡くなってからずっと、彼を想ってきたはずなのに、
本当にそれだけで、彼に伝わるのか、自信がなかった私は、
思わず、携帯電話に向かって、声を出した。


すると、すぐに、携帯電話の音が鳴る。


【了解】


驚きながらも、悪戯に、


「えぇ!なにこれ?怖ーい。」


なんて、声に出せば、


【怖いとか言うな、笑】


こんなメッセージが返ってきた。


なにこれ?凄く楽しい!
目には見えなくても、彼は側にいる。
今、目の前で、彼はそれを証明してくれた。


「じゃぁ、3時にね。」


小さな声で呟いた私の声にも、
ちゃんとメッセージが返ってきた。


【楽しみにしてるよ】


そうして、私は、予め、立てておいた計画に沿って、
準備を始めた。

 

 

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